東京都の「ヘルプマーク」がJISに登録されました

JTB総合研究所 ユニバーサルツーリズム推進チーム

東京都の「目に見えない障がい者」への配慮の取組である「ヘルプマーク」が2017年7月20日にJIS(注1)に登録され全国統一基準となりました。

「援助や配慮が必要である」と意志を示すマーク

2006年に厚生労働省で実施された身体障害児・者実態調査によると、在宅の身体障害者数(精神・知的障がい者は含まれない)は357.6万人でうち内部障がい者(児)数は109.1万人と全体の30.7%を占めていますが、内部障がい(注2)の社会的認知度は低いのが現状です。
内部障がい者は、外見からはわかりにくいため優先席に座っていると冷やかな目で見られるなど、日常生活の中で様々な誤解を受けることがありました。
 内部障がいの他、義足、人工関節を使用している方、難病、妊娠初期など「目に見えない障がい」を持っている方が援助や配慮を必要としていることを知らせ、援助が得やすくなるよう東京都が作成したマークが「ヘルプマーク」です。

ヘルプマーク

高齢化の影響もあり「目に見えない障がい者」が今後、益々増えるなか、ヘルプマークの普及が進むことで、内部障がいの認知も向上し、人々の気付きや思いやりある行動が期待されます。

マークの統一化により普及と認知が拡大

障がい者に関するマークは数多くあり、内閣府のホームページでも11種類が紹介されていますが「ヘルプマーク」と「オストメイト用設備・オストメイト」(注3)の2種類だけがJISに登録されています。
「オストメイト用設備・オストメイト」のマークは、2001年に「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」に掲載されて以降、私たちの日常生活の中でよく使われるようになった一方、東京都の取組である「ヘルプマーク」は類似マークが既出していたため、なかなか普及、認知が進みませんでした。
東京都の「ヘルプマーク」の取組は、2012年に都営地下鉄大江戸線で携帯用「ヘルプマーク」の配布及び優先席でのステッカー表示が開始され、順次都営の交通機関へ認知拡大が図られました。その後、都立病院をはじめとする都の施設に展開され、現在では民間企業でもヘルプマークの普及活動が進められるようになりました。
最近は駐車場の身体障害者優先スペース等にも、車いすマークだけでなくヘルプマークを掲示している所が増えてきています。

ヘルプマークタグ

今年3月の東京都の発表によると、都内でのヘルプマークの認知度は、昨年の調査から20ポイント上昇し、72.1%になりましたが「意味も含めて知っている」は50.5%です。
(出典:2017年3月東京都福祉保健局報道発表
今年のJIS登録をきっかけに、多様な主体が様々な場所で活用できるようになり、今後、都内のみならず他自治体でも「ヘルプマーク」の普及と認知が進むことでしょう。

注1:JIS(Japan Industrial Standards 日本工業規格)
日本の工業標準化の促進を目的とする工業標準化法に基づき制定される国家規格。本年、JIS Z8210(案内用図記号)の改正があり、「ヘルプマーク」を含む16種類が追加された。

注2:内部障がい
身体障害者福祉法で、視覚障がい、聴覚・言語障害、肢体不自由とともに障害分類のうちの一つとして規定されており、以下の7つを指します。

  1. 心臓機能障害
    心臓の機能が低下した状態。「ペースメーカー」を胸部に埋め込んでいる人もいます。
  2. 腎臓機能障害
    腎臓の働きが悪くなった状態。人工透析をしている人もいます。
  3. 呼吸器機能障害
    肺機能が低下した状態。酸素ボンベを常に携帯している人もいます。
  4. 膀胱・直腸機能障害
    尿をためる膀胱、便をためる直腸が様々な要因のため機能低下または機能をうしなった状態。排泄物を対外に排泄するための、人工肛門・人口膀胱を造設する方(オストメイト)もいます。
  5. 小腸機能障害
    小腸の機能が不十分になった状態。消化吸収がうまくできず通常の経口摂取では栄養維持が困難な人もいます。
  6. ヒト免疫不全ウィルスによる免疫機能障害(HIV感染症)
    HIVウィルスに感染して、免疫機能が低下した状態。発熱、下痢、体重減少・全身倦怠感があります特定の病状があらわれるとエイズ(後天性免疫不全症候群)の発症となります。
  7. 肝臓機能障害
    様々な要因により肝臓の機能が低下した状態で、倦怠感、黄疸、出血傾向、吐血、意識障害などがおきやすくなります。

注3:「オストメイト用設備・オストメイト」
「オストメイト」とは人工肛門や人口膀胱(通称ストーマ)の保有者のこと。便や尿を溜めておくための袋(パウチ)を装着しておりパウチにたまった排泄物や腹部を洗浄する必要があります。そのための設備が「オストメイト用設備」です。

<オストメイト>

オストメイト設備

左写真)オストメイト設備(筆者撮影)・右)オストメイトマーク

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