日本におけるラグジュアリーホテル競争

ザ・ペニンシュラ東京が開業した。東京への外資系高級ホテルの開業ラッシュの背景と、国内老舗ホテルの対抗、大手不動産会社の動きについて読み解きます。

若原 圭子

若原 圭子 主席研究員

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9月1日にザ・ペニンシュラ東京が、銀座にも程近い、皇居に面した一等地に開業した。日本への外資系高級ホテルの開業ラッシュが続いているなかで、最も注目されているホテルである。先行して開業したコンラッド東京、マンダリンオリエンタル東京、ザ・リッツ・カールトン東京が複合ビルの高層階にあるのに対し、ザ・ペニンシュラ東京は地上24階建てのビルを丸ごと利用している。これは、ペニンシュラが、東京の一等地で開発を進める国内不動産業界大手の三菱地所と定期借家法に基づく賃貸借契約(50年間)を締結した結果、実現したものだ。このため、客室からは、高層階のロケーションとは異なる自然で落ち着いた目線で、皇居の緑や広い空、高層ビル、夕陽が沈む富士山なども見ることができる。もっとも多いタイプの客室面積で54平方メートル、客室料金は約7万5千円といずれも都内で最高水準である。

外資系ホテルが東京に相次いで進出しているのには、いくつかの背景がある。第一に、日本経済が大幅に下降した「バブル崩壊」後に東京の建設コストがかなり安くなったこと、次に都心のさまざまな再開発計画のコア・プロジェクトとしてホテルが誘致されたこと、そして政府のビジット・ジャパン・キャンペーンもあり訪日外国人数が増加傾向にあることなどである。また、先進国の主要都市と比較して、東京はメジャーブランドのホテル数が不足していることに加えて、欧米からの客にとっては、円安により東京の高級ホテルは海外都市の同様なホテルに比べて割安感があることなどもあげられる。

国内の老舗のホテルは、こうした外資系ホテルの攻勢に対して、客室を広くしたり、設備を充実させたりと大規模改装で対抗している。なかでも、国内で高いブランド力を持つ帝国ホテルが、国内不動産業界売上首位でこのエリアの再開発の構想を持つ三井不動産の傘下に入った。開発資金を潤沢に持つ同社と組んで競争力を高めるのが狙いだ。

外資系高級ホテルの開業ラッシュと既存ホテルの高級化は、訪日外国人客の増加だけでなく、都内や地方の日本人富裕層などの潜在的なレジャー需要の掘り起こしにもつながっている。

いま、日本進出を目論む外資系ホテルやこれに対抗する国内ホテル側の思惑と、東京都心部の再開発を進める不動産業の思惑とが一致し、ラグジュアリーホテルが再開発の重要な要素となっている。