20代の消費・旅行に関する調査結果第三弾(JTB総合研究所独自調査)
旅行の同行者によって、楽しみ方や行き先まで異なってくる。「同行者」との関係を重要視する20代。彼らはどんな旅行を好むのか?旅行の阻害要因はなにか?同行者との関連は?JTB総合研究所の独自調査で検証する。
河野 まゆ子 執行役員 地域交流共創部長
前回のコラムでは、20代の旅行経験について、世帯年収別に検証した。では、実際に彼らは誰と、どのような旅行をしたいと思っているのだろうか。
20代の旅行を決定づける要因として、費用や休暇と同じくらい重要なものは同行者だ。20代に、「最も一緒に旅行に行きたい同行者」を尋ねたところ、「配偶者・恋人」(45%)が半数近くにのぼり、「友人と2~3人で(21%)」、「家族で(18%)」、「ひとりで(14%)」の順となった。家族構成別に「最も一緒に旅行に行きたい同行者」をみると、子供のいる既婚者は「子どもを含む家族」が圧倒的に多く、それ以外では「配偶者・恋人」や「気兼ねをしない気の合う友人・同居者」の希望が多い。男女別にみると、友人とのグループ旅行を希望する比率は未婚女性で高く、未婚男性は一人旅を好む傾向にある。
彼らは、「最も一緒に旅行に行きたい同行者」と、どのような旅行をしたいと思っているのだろうか。旅行の楽しみ方について希望する同行者別にみると、全般的に「自然や風景を楽しむ」、「地元の美味しいものを食べる」が上位となる。20代若者層にとってふたり旅や家族との旅行で「温泉でのんびり」したい意向が高い。気の置けない相手とならば、一緒にいること自体がひとつの目的になり得るということだろう。また、グループで出かけるときは、同じ目的、楽しみを共有できる「テーマパークやスポーツ旅行」が好まれ、同行者への気兼ねが要らないひとり旅では「趣味を楽しむ」旅行の希望が高い。同行者に応じて旅の楽しみ方を使い分けている20代の姿が浮かび上がる。
20代が国内旅行・海外旅行をためらう理由は何だろうか?国内・海外で共通する要因として、①お金がないなどの金銭的理由、②休みが取れない、③一緒に旅行したい人とのスケジュールが合わない、の3点が挙げられた。また、前述のように旅行の目的や行き先に応じて同行者を選ぶ傾向が強い20代にとっては、同行者とのスケジュール調整も大きな課題となる。
「旅行より他に使いたいものがある」が、国内旅行をためらう理由で2位、海外旅行で3位となった。前々回のコラムにみるように、日常生活にかかわる消費でさえ日々の収入で不足する部分をボーナスで補填している20代の生活実態の一端が現れている。
また、海外旅行の阻害要因としては、上記要因のほか、「言葉が通じない」、テロやSARSなどの伝染病、食品問題が背景にある「旅先でのトラブルが心配」、「治安や伝染病が不安」、「食べ物や衛生面が不安」が挙げられた。
今回の調査で、人間関係を重視しつつ、消費対象や旅行の行き先を合理的に選択する現代の20代特性の一端が見えてきた。今後、彼らが歳を重ねて世帯年収が増加し、治安や衛生に対する社会不安が軽減されたとき、彼らの旅行スタイルはどのように変化するのか楽しみだ。