国が進めるニューツーリズム~「ニューツーリズム創出・流通促進事業」~

国土交通省では、平成19年度から「ニューツーリズム創出・流通促進事業」に取り組んでおり、これは標題のとおり、ニューツーリズムの"創出"と"流通"を促進するという2つの狙いを持った事業です。観光を通じた地域活性化や地域の再生問題は勿論ですが、それと共に旅行事業や旅行商品としていかに国内旅行を活性化するかという点に軸足が置かれています。

中根 裕

中根 裕 主席研究員

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週刊トラベルジャーナル誌・連載 2008年7月28日号

国土交通省総合政策局の観光事業課では、平成19年度から「ニューツーリズム創出・流通促進事業」に取り組んでおり、これは標題のとおり、ニューツーリズムの”創出”と”流通”を促進するという2つの狙いを持った事業です。ご承知のように国交省観光事業課は旅行業と旅行商品を所管する課ですので、観光を通じた地域活性化や地域の再生問題は勿論ですが、それと共に旅行事業や旅行商品としていかに国内旅行を活性化するかという点に軸足が置かれています。

ニューツーリズムの”創出”・・・地域主導の新しい旅行の商品をいかに生み出すか

「観光はまちづくりの総仕上げである」これは私の恩師である鈴木忠義先生(東工大名誉教授)の言葉です。今まさに日本の地方・地域を観光で活性化しようとする動きが現実化しつつあります。ニューツーリズムとして新しい地域資源を発掘し、磨き上げ、さらには商品としてお客さんに見せるかは、今までの観光関係者だけでなく、地域によっては農家であったり伝統産業を護り続ける地場産業であったり、地域の様々な人達が関わりあって取り組むことが問われています。そして旅行会社も、より地域と密接な関係で連携し、旅行商品として造りあげる取り組みを支援する事業です。具体的には2007年度の支援事業に全国から125の応募があり、うち47件が採択され、実証モニターツアーが実施されました。テーマは”産業観光”や”ヘルスツーリズム”そして一拠点に滞在して地域を楽しむ”ロングステイ観光”など多種多様で、旅行会社も大手のみならず、地域に根を張った第二種、第三種旅行業による旅行商品も催行されました。旅行会社と地域との関係で言えば、旅行会社にとって従来の契約施設や組織でない人々とも連携せねばなりません。このモニターツアーはあくまで実験ですが、現実の事業として見た時に、地域と旅行会社の役割分担や条件をどうするか、そして何よりもこうした地域資源を編集し旅行商品として纏めるには”手間がかかる”という前提を乗り越えねばなりません。しかし2007年度実験された旅行商品のいくつかは、2008年度、国の支援を受けずに販売・催行され始めています。

ニューツーリズムの”流通”・・・いかにマーケットに伝え、届けるか

こうしたニューツーリズムの旅行商品を、いかに国民、消費者に届け、旅行を誘発させるかという流通システムの変革が、当事業のもう一つのテーマです。大手旅行会社では自社ブランドの国内企画商品を持ち、各々の店舗、ネットワークを駆使して販売しています。しかし述べたような地域のきめ細かい資源の発掘や人材ネットワークを、すべて自社内で完結させることには限界があります。「地域資源を手間暇かけて旅行商品化したいのは山々だが、経費・コストで成り立たない」というのが本音でないでしょうか?

一方、2007年、旅行業法が一部改訂になり、第三種旅行業でも条件を満たせば、募集企画型旅行商品を開発し販売できるようになりました。中小であっても地域を良く知っている旅行会社だからこそ地域資源を活かした旅行商品の造成・販売が可能となったと言えます。最近、地域の側からも観光協会としてあるいはLLC(合同会社)を設立し第三種旅行業を取得する例が出てきています。しかし地域の中小の旅行会社にとって最大のネックは、大都市や全国へ向けての販売網や営業力にあります。

その大手と地域の旅行会社とのマッチングによるニューツーリズムの流通促進の試みとして2007年末より「ニューツーリズム・データベース」のサイトが開設されました。現段階では旅行会社同士で”仕入れる””卸す”即ちB2Bの旅行商品情報サイトですが、先に述べたニューツーリズム地域資源に対する大手旅行会社のジレンマと、全国販売網を持たない地域の旅行会社双方にとって、「魅力ある旅行商品を全国に流通させる」ための新しい流通システムとして期待されています。

ニューツーリズム・データベースサイト

ニューツーリズム・データベースサイト