ニューツーリズムをプロデュースする組織
前回はニューツーリズムの流通部分で、着地型のプログラムを消費者に直接届ける最近の動きを紹介しました。今回はそのニューツーリズムの新しい資源やプログラムを造り上げる地域の動きについて述べたいと思います。
中根 裕 主席研究員
週刊トラベルジャーナル誌 ・執筆 2008年10月27日号
前回はニューツーリズムの流通部分で、着地型のプログラムを消費者に直接届ける最近の動きを紹介しました。今回はそのニューツーリズムの新しい資源やプログラムを造り上げる地域の動きについて述べたいと思います。
観光庁の観光地域振興課では、2008年度「持続可能な観光まちづくり事業体の創出支援調査事業」に取り組みはじめました。この”観光まちづくり事業体”とは、これまで各所で言われていた”中間支援機能””地域コーディネート組織””地域観光コンシェルジュ”あるいは”ATA(エリア・ツーリズム・エージェンシー)”等々と同義あるいはそれらを含んだ組織体のことです。
これまで地域の観光を推進する団体は、行政内の観光課と観光協会や旅館組合でした。しかしニューツーリズムの資源や人材・組織が第一次産業、商業、まちづくり組織などに拡がってくると、従来の所管や会員メンバーでは収まらなくなってきたのが現実で、観光振興を地域のまちづくりや活性化と連動させるためには、従来の組織の拡がりでは限界が出てきます。この背景を受けて地域では呼び方はまちまちでも、観光協会に代わる、あるいは拡大した組織化に取り組む動きが現れています。
例えば「北海道ニセコでは観光協会を株式会社化した・・」とか「南信州観光公社は飯田市周辺市町村のグリーンツーリズム受け入れ窓口として・・」あるいは「伊豆稲取では女性観光プロデューサーを招聘しLLC(合同会社)を設立し、第三種旅行業を取得した・・」といった話題をお聞きになった方もいると思います。ここでご紹介した体験観光などのニューツーリズム資源を運営される方々は、一般農家であったり一商店主であったり、地域の中小企業の方が概して多く、さらに観光の専門家ではありません。その方々を地域で結束させ、旅行の商品として形作る組織が地域の中に求められているのです。
ある意味、海外旅行でいうところの”ランドオペレーター”の機能ともダブります。そして、販売する側の旅行会社としても地域にこうした組織が、地域ならではの商品を造成し卸してくれることで、より効率的にニューツーリズムを商品化しやすいと考えられています。
しかし今一番の課題は、これら地域を横断的にプロデュースする観光事業体が、行政依存でなく、いかに自立できるかについてなのです。そしてこれに対する解答や事業モデルは未だ確立していないのが現状です。小ロットのマーケットも大切にし、手間ひまをかけた地域の体験プログラムがニューツーリズムの魅力である一方、そのコストを”手数料”だけで補うことは困難です。
地域ビジネスとして継続させるためには、観光分野にとどまらず、限られた地域の人材や収益事業をこの事業体に複合させていくことが不可欠で、ことは地域全体の組織や運営のあり方にも関わる問題と言えるでしょう。このテーマは根が深く重要なテーマなので、また機会を改めてこの場で述べたいと思います。