『子連れ海外旅行』を考える(その4)~子連れ海外旅行の市場拡大の可能性~

「子供がいるから海外旅行なんてムリ」と思いこんでいる、かつての海外旅行大好き世代である30代、40代の子育てママ達を再び海外旅行市場に呼び戻すには、子連れ海外旅行者向けのサービスをどのようにアピールすればよいのだろうか。子連れ旅行が盛んにおこなわれている国内にそのヒントがあった。

中島 ひろみ

中島 ひろみ

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子供が生まれて少し子育てにも慣れ、そろそろ赤ちゃんと一緒の旅行も大丈夫になった頃、ママ達の間でよく話題に上る旅行先のひとつが『ホテルグリーンプラザ軽井沢』だ。このホテルには『赤ちゃんプラン専用ルーム(和洋室)」というものがあり、次のような設備がある。

  • ベビー布団
  • おまる、ベビーバスチェア
  • 調乳器
  • おむつ専用ゴミ箱
  • 子供用ハンガー、スリッパ
  • 戸棚などの「いたずら防止ストッパー」、コンセントカバー
  • 通常の客室の2倍のタオル

客室以外にも、レンタルベビーカーが用意されており、子どもたちが絵本やブロック、ジャングルジム、すべり台などで遊べる無料のキッズルームもある。ホテルに隣接する『おもちゃ王国』は0歳児から楽しめる施設だ。

こうした赤ちゃん向けの設備やサービス以上に、このホテルにママ達を惹きつけているのは、離乳食メニューがあるバイキングだ。

「せっかく旅行に行っても、自分たちだけおいしいものを食べて、子供はレトルトの離乳食ではかわいそう。旅行は子供がもっと大きくなってからでもいいかな」と思う親はかなり多いはず。このホテルでは大人も子供も、赤ちゃんだってホテルのレストランで供されるものを一緒に楽しむことができる。子供が小さいうちは、どうしても親の都合で子供を連れ回す旅行になりがちだ。”親も子供もみんなが楽しめる”と思うことで、親は少しでも負い目を感じなくて済むのかもしれない。

『成田買い』という言葉があるくらい、成田空港での出発前のショッピングは盛んだ。30代40代のママ達も、かつては海外旅行に行くたびに化粧品やらブランド品を買いこんでいた世代で、必需品の化粧品などは日本人向けの品揃えが豊富な成田空港の免税で買い、現地ではゆっくりとお土産や日本で買うより安いブランド品を物色していた。そんな成田空港では「キッズスペース」+「成田買い」でママ達にアプローチしたい。日頃子供に接する機会の少ないパパに子供を預け、「キッズスペース」で一緒に遊んでもらっているうちに、ママはゆっくり一人で「成田買い」。それぞれみんなが楽しい時間を過ごせるので、ママも気兼ねなく買い物できる。「久しぶりにゆっくり化粧品も買いたいし、パパも子供も楽しめるなら、また成田空港から海外に行ってみたいな」と思ってもらえるかもしれない。

グリーンプラザは、バイキングに離乳食メニューを追加するという、ごくシンプルなサービスで子連れ旅行者に強くアピールしている。前回ご紹介した「すごく特別ではないが、あると便利な海外子連れ旅行者向けのサービス」の数々は、それを周知するだけでも、子連れ海外旅行の促進効果が期待できるのではないだろうか。

特に子ども向けの設備やサービスでなくても、子連れ旅行者のニーズに合致すれば、それが売りになる。たとえば、ホテルのベッド。子供は寝相が悪いもの、寝ている間にベッドから堅い床に転落することが心配だ。キャスター付きのベッドを採用しているホテルであれば、「ベッドを壁際に寄せられるので安心」とアピールでき、他に子ども向けのサービスも無くても、「子連れ向けのホテル」という事になる。ベッドガードを新たに購入する必要もないのだ。

このように子育て中の親が不安に思う事が何なのかを知り、それを取り除くためのちょっとした工夫をすれば、子連れ海外旅行マーケットは、ますます広がっていく可能性がある。
次回は子育て中の親が海外旅行中に不安に思う事、”子連れというバリア”について考えたい。