ニューツーリズムを牽引する地域の人材

観光で地域を活性化するにはキーマンの存在が不可欠です。今回は、ニューツーリズムを地域の立場で創造し、観光を通じた地域の活性化に取り組む人材について述べたいと思います。

中根 裕

中根 裕 主席研究員

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週刊トラベルジャーナル誌 ・執筆 2008年12月8日号

観光で地域を活性化するにはキーマンの存在が不可欠です。今回は、ニューツーリズムを地域の立場で創造し、観光を通じた地域の活性化に取り組む人材について述べたいと思います。

以前「観光まちづくり事業体」の役割について述べましたが、組織や仕組みとして従来の観光協会や観光関係者だけでは、ニューツーリズムの地域資源の創出には限界があり、地域横断的な役割が各地で問われています。そして何よりもその機能を果たす組織の前提として、観光で地域を活性化しようとするキーマンの存在が不可欠です。近年では”観光カリスマ”とか”地域観光プロデューサー”などと呼ばれる地域の旗振り牽引役です。

2007年度、経済産業省の調査結果から「観光・集客力向上への手引き」が発行されました。それはこの厳しい国内観光の時代に、成功している観光地を99地域選出し、その地域の取り組みを数量化した調査です。その中で、成功に導いたリーダーの存在とその立場を捉えた結果があります。最も高い結果だった”行政の長”は当然として、観光協会だけでなく、商工会議所や民間企業さらにはNPO法人の人材であったり様々であることが分かりました。またこの調査では地域のリーダーの存在と共に、そのリーダーを支えるサポーターなりブレーンの存在が大切との結果も得られています。当たり前ですが、たった一人で地域を横断的にまとめ上げるのは無理です。”担がれる役割”と同時に”担ぎ手”も不可欠で、それが今まで以上に地域の様々な分野の人に浸透することが必要なのでしょう。

昔から観光分野に限らず地域づくりとか、まちづくりのキーマンには「よそ者」「ばか者」「若者」が必要と良く言われています。
「よそ者」とは決して外部のコンサルタントや有識者とは限らず、地域にUターンあるいはIターンした人で良いのです。必要なのは地域と同列の視線だけでなく、地域に欠けがちなマーケット(=都市の立場で)の感性です。また地域外のブレーンやパートナーの存在も重要で、旅行会社が着地型旅行商品と称して地域との新しい関係づくりが模索されていますが、民間事業者としては新たなビジネス開拓であると同時に、地域の側から見れば「よそ者としての客観的な視点」が期待されているのです。

「ばか者」とは場面、局面によっては金銭価値やしがらみに囚われず行動できる人と言えます。ある意味でバカと称されるくらい、何かにこだわれる人物とも言い換えることが出来ます。ニューツーリズムはまだ鼻緒に着いたばかりです。これならば成功するという前例があるわけではありません。だからこそ新しい事にチャレンジする「ばか者」の存在が貴重だと言えるのです。
3番目の「若者」はその言葉の通りですが、私は「女性」も加えるべきだと思っています。地域に限らず永く続いた慣例や習慣を変えるのは難しいことです。まして地域の中で、さらにかつての成長期の成功体験を経験している人達だけで地域を変えようとしても殻を破ることは至難の業です。地域の限られた人材だからこそ、次世代を担うべき若者を先頭に立たせるべきです。また理屈やデータに囚われがちな男性陣よりも観光産業だからこそ女性の感性と行動力に期待してよい時代だとも言えるでしょう。

最後に地域づくり対する私の恩師の言葉をご紹介しておきます。『地域にまず必要なのは郷土への”誇り”、加えて将来、未来に対する”希望”、それが備わると”勇気”(行動)が生まれる』これは地域に限らず企業とて同じだと思います。

観光地域のリーダーの属性

図:観光地域のリーダーの属性
出典:「観光・集客力向上への手引き」2008年3月 経産省サービス産業課より