レジャー路線の活性化に期待
4月以降の海外旅行の予約状況が好調だ。チャーター便の規制緩和や、航空会社の路線再編など、レジャー・マーケットにとってはプラスとなる要因もある。プラス要因とマイナス要因の交錯する今年の海外旅行市場を見てみたい。
早野 陽子 主席研究員
4月~6月の海外旅行予約状況が好調だ。JATA(日本旅行業協会)が取りまとめた大手旅行会社7社の予約状況は全方面計で4月が123.5%、5月が123.2%、6月が117.6%と2年ぶりに増加を見せた。4月から燃油サーチャージ額が大幅に下がったことで、2~3月までは待ちの状態だった旅行者が一気に動いたことやウォン安で人気が高まった韓国への渡航者増が後押しをしたことなどが背景にあると考えられる。この動きだけを見ると、ここのところ低迷が続いていた海外旅行市場が回復基調に転じたかのようにも思われるが、楽観視ばかりはできない。
2008年秋以降の世界的な経済危機によって日本経済も大きな打撃を受け、人々の生活は不安定になりつつある。JTM(ツーリズム・マーケティング研究所)が20歳~69歳の女性を対象にこの3月に行った海外旅行に関する調査では、回答者の4割以上が「将来の生活が極めて不安」と回答し、「実際に月収やボーナス、残業代などが減少した」と回答した人も14~18%に上った(図1)。 更に、2009年の海外旅行に最も影響を与えそうな要因としては、どの年代も「景気の動向」が最も高くなった(図2)。また、企業の業績が悪化していることから、出張やコンベンションなどビジネス関連の海外旅行は大幅な減少が予想される。
しかし、レジャー・マーケットにとっては必ずしも悪い要因ばかりとは言えない。ここ数年間にわたりレジャー路線を縮小し、ドル箱であるビジネス路線を拡充してきた航空会社だが、この経済危機でビジネス需要が減少したことによるビジネス路線縮小の動きも見られ、結果的に機材をレジャー路線に振り分ける余裕が生まれた可能性が高いからだ。折しも、2008年12月に施行されたチャーター便の規制緩和によって、第三国の機材利用がより容易となり、成田発の便では定期路線が就航している路線でもチャーター便の運航が可能となるなど、航空会社にとってはより柔軟な路線編成が可能となった。
座席供給数と渡航者数の間には密接な関係があり、座席供給数の減少は渡航者数の減少に直結するため(図3)、レジャー路線の縮小傾向に歯止めがかかることは、今後海外旅行市場を再活性化するために重要な要因であると考えられる。今の段階では、燃油サーチャージの値下がりやチャーター便規制緩和といったポジティブな要因と、経済低迷や新型インフルエンザの広がりなどのネガティブな要因のどちらが2009年の海外旅行市場全体に強い影響を与えるのかを判断することは難しいが、レジャー路線への座席供給数が増加に転ずることで、ここのところ縮小が続いていたレジャー・マーケット再活性化のきっかけとなることを期待したい。