<連載>『JTM海外旅行実態調査』から海外旅行とデスティネーションの魅力を探る 第3回  春休み、夏休みシーズンには2006・7年水準に戻っていた2010年の日本人海外者数

2010年の日本人出向者数は、リーマンショック後の世界的な不況と新型インフルエンザに見舞われた2009年実績から回復に転じたが、その牽引役となったのはレジャー・観光目的の個人マーケットだ。また、急速に進んだ円高と、日本人訪問者数が300万人代を維持している身近なディスティネーション韓国との関係について考えてみたい。

磯貝 政弘

磯貝 政弘

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春休み、夏休みシーズンには2006・7年水準に戻っていた2010年の日本人海外者数

2010年の日本人出国者数は約1,664万人。前年がリーマンショック後の世界的な不況と新型インフルエンザに見舞われた年であったこともあって、前年比7.7%もの大きな増加がみられた。

しかし、年間出国者数が約1,753万人を数えた2006年比では5.1%減、同じく約1,729万人だった2007年からは3.8%の減少である。口蹄疫の流行やアイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル、九州の新燃岳の噴火などの出来事は確かに発生したとはいえ、社会経済環境は前年に比べてはるかに安定していたにもかかわらず、1,700万人台に到達できなかったことをどのように評価するべきかという問題は残る。

そうしたときに気づいたのは、3月と7月~9月の4ヶ月間の出国者数だけが2006年、2007年の水準とほぼ同等であったことだ。それ以外の月は、2月を除くすべての月が前年を上回ったものの、2006年、2007年の水準には大きく及ばなかった。(図1)

図1 日本人出国者の月例推移

この現象をどのように捉えるべきか。
あまり短絡的に判断するのは憚られるが、夏休みや春休みのように長期休暇を取得する機会さえあれば、レジャー・観光目的の海外旅行需要は決して減退しているわけではない。景況感に左右されやすい法人マーケットに比べて、個人マーケットははるかに安定している。そのようなことを証明する結果であると理解したい。
東京電力管内の夏の電力不足が懸念されるなか、いつもよりも長期間の夏休みを計画する企業や団体が増えそうだ。もしその通りになれば、一気に2010年並みの数の日本人が海外へ出かけることになるような気がしている。

リーマンショック後の円高で旅行者数が大幅に増えたのは韓国だけ

2010年のもう一つの特徴は、2009年に初めて300万人の大台に届いた訪韓旅行者数が2010年も300万人を維持したことである。その背景には、リーマンショックを契機に急速に進んだ円高の存在があるとみて差し支えなさそうである。(図2)それを「海外旅行実態調査」に寄せられた訪韓日本人旅行者の言葉からみていこう。

図2 為替レートの推移

「図3」は2007年に韓国旅行をした人が「海外旅行実態調査」に書き込んだ「韓国へ旅行して良かったこと」をテキストマイニングしたものであり、「図4」は同じ質問に対する2010年の訪韓旅行者の感想を集計したものである。サンプル数は最も円安ウォン高(最も円が安かった7月の月中平均100ウォン=13.28円)だった2007年が344人。これに対して100ウォン=7円台で推移した2010年が499人。これだけをみても円高ウォン安が日本人に韓国旅行を強く促したことがわかる

図3 2007年に韓国旅行をした日本人が「韓国でよかったと思ったこと」