消費者目線の国内観光の評価(観光経済新聞 2013年6月8日掲載)
観光はサービス産業であり、消費者(旅行者)が観光地や旅行先をどう評価しているかを知り、どう対応するかは観光地側の基本的なテーマである。しかし供給側の観光地や民間企業さらにプロである旅行会社であっても、意外に「消費者目線」を忘れてしまうことが多い。全国の消費者が各観光地をどう評価しているかについて、一部であるがその結果を紹介する。
中根 裕 主席研究員
観光はサービス産業であり、消費者(旅行者)が観光地や旅行先をどう評価しているかを知り、どう対応するかは観光地側の基本的なテーマである。しかし供給側の観光地や民間企業さらにプロである旅行会社であっても、意外に「消費者目線」を忘れてしまうことが多い。
JTBでは2013年度「地域パワーインデックス」と称して、全国150箇所の主要観光地に対する認知度、イメージ、満足度についてアンケートを実施した。ここでは全国の消費者が各観光地をどう評価しているかについて、一部であるがその結果を紹介する。
≪観光地の認知度と興味度≫
観光地という商品を購入するか(旅行に出かけるか)は、観光地に消費者を惹きつける魅力があるか否かがポイントだが、そもそも存在が知られてなければ行動に移らない。この調査で全国150観光地に対して「知っているか」と聞いており、その認知度の上位ランクが表1である。
認知度上位の観光地は、ほぼ誰もが知っている著名観光地が占めている。ただし併せて質問した「興味があるか(行ってみたいか)」という結果と並べてみると、必ずしも「高認知度=行ってみたい観光地」とは限らない。
認知度2位(93%)の「網走」は興味度では40%しか支持を得ていない。観光分野の網走の知名度の前に、かつて一世を風びした「網走番外地(1965年)」と主演「高倉健」の存在が高い認知度の背景にあるのだろう。
しかしかつての知名度も時代と共に薄まり、いつまでも昔の知名度に頼っている訳にはいかない。事実、網走の場合、世代毎に認知度を比較してみると60代に比べ20・30代の認知度は10ポイント低下している(図1)。
まだ地域に対する認知度が高いうちに、「新たな興味=行ってみたい」を作り上げることが求められるが、逆に歴史があり知名度が高い観光地ほど、新たなイメージを作り出すのが難しいケースが多い。つまり昔のイメージや旅行経験を引きずっている消費者が少なくないのだ。
『若いころ行ったことがあるけど・・』
『あの温泉地は○○だったから・・』
と固定観念を持たれている観光地は、知名度が低い観光地以上に、その変化と情報発信に力を入れる必要があるだろう。