ドイツ観光の2014年のテーマは「世界遺産」
ドイツ観光局が、このほど2013年の実績報告と2014年の全世界で実施する観光キャンペーンのテーマを発表した。2014年の観光テーマは「38のユネスコ世界遺産」であり、38の世界遺産を巡る8つの観光ルートを選定した。ドイツの魅力がつまったこのルートを概観してみる。
磯貝 政弘
ドイツ観光局が、このほど2013年の実績報告と2014年の全世界で実施する観光キャンペーンのテーマを発表した。
2013年にドイツを訪れた旅行客が前年比4%増の7,160万泊となったという。10床以上の宿泊施設を対象とする統計数値だが、イギリス、ロシア、スイス、アラブ湾岸諸国、ポーランドからの旅行客が増加したことが大きな要因だそうだ。また、アジアでは中国などからの旅行者も増えているという。
一方、円安の影響もあってか、日本からの旅行客は微減。旅行者が減少したのは、ほかに3か国しかないそうだ。国が財政破綻したギリシャですら増加したというから、日本の国情はそれ以下か。などと勘繰りされても、言い返す材料が見当たらない。
それはさておき、ドイツ観光局の2014年の観光テーマは「38のユネスコ世界遺産」である。38の世界遺産を巡る8つの観光ルートで、ドイツの魅力をより多くの人々に知ってもらい、より深く味わってもらおうというものだ。
さて、ここで8つの観光コースの概要を書き留めておこう。
- ルート1「大自然の驚異と誇り高き諸都市-北ドイツの歴史地区」
- ルート2「夢想家と先駆者-建築とデザイン、宗教改革」
- ルート3「地下資源と建築-ハイキングコースと自然体験、木骨家屋」
- ルート4「生きる喜びと高度な文化-ライン・ルール地方における皇帝と領主、産業界の大立者」
- ルート5「宮殿と庭園-宮廷のエレガンス」
- ルート6「ローマ帝国時代と生活様式-南ドイツの旧市街アンサンブル」
- ルート7「宗教施設とホスピタリティ-教会と修道院、大聖堂」
- ルート8「アルプスとボーデン湖の間-ドイツ南部」
自然と都市、宗教と建築、芸術、宮廷と文化、ホスピタリティそして歴史といった、ドイツに対して多くの人が抱いているだろう期待感と興味をくすぐる内容が、巧みに編集されている。
ちなみに、株式会社JTB総合研究所で毎年2月に実施しているアンケート調査「海外旅行実態調査」で、2007年から2013年まで7年連続して訪問先で感じた「良かったこと」を自由記述で訊いている。図は、そのなかからドイツを旅行した人が感じたドイツの良いところ、感動した対象を整理したものだが、城に代表される建築物と歴史的な都市の景観、それらが自然との調和を見事に実現していることに、大半の旅行者が感動している様子が一目瞭然にみてとれる。そうした押さえどころを外さず、そこに歴史、文化、生活スタイルといった無形の要素を組み込むことによって、より一層滋味深いものとしようとする心意気が感じられる。ひょっとすると、日本人の旅行に関する感性に一石を投じるキャンペーンとなるかもしれない。
ところで、日本にある世界遺産は現在17である。2014年6月に、群馬県の富岡製糸場が登録されれば18になる。そろそろ世界遺産を軸に据えた観光ルートづくりとそれを使った国際プロモーションを始めてもよいのではないだろうか。クールジャパンとは別に、正攻法のプロモーションを考える時期に来ているように思うが、どうだろうか。
そんなことを思い描きつつ、ドイツ観光局の取り組みをこの1年間、注目し続けてみたいと思う。