観光経済新聞再掲 ~マーケットを読む・「これからの集客施策は『スマホ・ファースト』で」
旅行行動の変化に伴い3つのキーワード、すなわち「ソーシャル」「ローカル」「モバイル」がカギを握り、これからのマーケティングでは間違いなくスマホが主役となる。これからは発想自体を一刻も早く「スマホ・ファースト」(英語では「モバイルファースト」)、つまり最初にスマホでどう展開するか、という考え方に切り替えていくことが必要だ。
鶴本 浩司 客員研究員
これからの集客施策は「スマホ・ファースト」で(観光経済新聞 11月2日掲載)
JTB総合研究所客員研究員 鶴本浩司
旅館に到着した外国人が受付で自分のスマートフォン画面を見せ、引き換えに無料ドリンク券をもらう。この一場面は後述するマーケティング手法のひとつだが、今後はさらに多く目にするシーンかも知れない。スマートフォン(スマホ)はここに来て普及が進み、コミュニケーション装置の中心的な存在となった。
一方で、スマホと歩調を合わせるようにフェイスブックをはじめとしたソーシャルメディアも深く浸透してきた。JTB総合研究所が2013年9月に実施した「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査」ではスマホ利用者の47.7%はでソーシャルメディアを活用していると回答。すでに日々のコミュニケーションに深く組み込まれている。
これらの変化は旅行における行動においても顕在化してきた。例えば宿泊施設のチェックイン直後に客室からの風景を撮影しフェイスブックに投稿する、という”実況中継”を目にすることも珍しくなくなった。
しかしこの行動の変化はじつはまだ黎明期で、これからさらに進化していくことになる。その進化は3つのキーワード、すなわち「ソーシャル」「ローカル」「モバイル」がカギを握る。最初の「ソーシャル(Social)」は言うまでもなくソーシャルメディアのこと。次の「ローカル(Local)」は位置情報のことを指す。スマホはGPS(全地球測位システム)による位置情報が標準装備だ。そして最後の「モバイル(Mobile)」はスマートフォンのことだ。これらのキーワードは接頭文字を組み合わせ「SoLoMo」(「ソロモ」)と呼ばれている。
この「SoLoMo」は観光とは極めて親和性が高く、欧米ではすでにマーケティングの活用事例が増えている。例えば、写真のように、現地発着ツアーの催行会社は、ツアー体験の感想を自分たちではなく、トリップアドバイザーなどのソーシャル性のあるサイトへの投稿を促している。フェイスブックやツイッターとも連動しているため、友人・知人に拡散しやすい。また位置情報とソーシャルメディアとの活用例として、旅行者自身がある地点でチェックインと呼ばれる操作を行うと、その近隣のレストランが特典をオファーして集客に結びつけている。
日本でもようやく「SoLoMo」を活かしたマーケティング事例が現れ始めた。冒頭で書いた、旅館で宿泊客がフェイスブックで「チェックイン」(位置情報の記録)をすると無料ドリンク一杯プレゼント、というのもその一例だ。これからのマーケティングでは間違いなくスマホが主役となる。だからこそこれからは発想自体を一刻も早く「スマホ・ファースト」(英語では「モバイルファースト」)、つまり最初にスマホでどう展開するか、という考え方に切り替えていくことが必要だ。