観光経済新聞再掲 ~マーケットを読む・「『プラス思考』でトレンド探れ」
観光が成長戦略の戦略市場創造プランに位置付けられ、多種多様な業態がビジネスチャンスを奪い合う状態になっているが大切なのは刹那的トレンドに翻弄されるのではなく、「プラス思考」で市場を固視してチャンスをつかむことである。
日比野 健
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「プラス思考」でトレンド探れ(観光経済新聞 11月23日掲載)
今年に入り、国の経済政策への期待が高まる中、観光が成長戦略の戦略市場創造プランに位置付けられ、世間の関心が高まっている。しかし、この追い風はすべての観光関係者の将来を保証するものではなく、多種多様な業態がビジネスチャンスを奪い合う状態に他ならない。だからこそ、刹那的トレンドに翻弄されるのではなく、「プラス思考」で市場を固視してチャンスをつかむことが大切だ。
ここ最近、百貨店の売り上げが回復し、高額商品の売り上げが好調だ。一方、リーマンショック後高い支持を得ていた廉価な外食チェーンが苦戦中だ。彼らはその後の生活者の心の変化など、時代感覚の取り入れ方を見誤ったのだろうか。
今は「安い」だけではモノが売れない時代である。多くの商品や情報があふれ、欲しいものにそれほど不自由しない中、生活者はお金を払って「モノ」を手に入れても、それを通じて得られる質の高い心の充足感、つまり、「コト」や「体験」に価値を見出す傾向があるのではないか。
先ごろアメリカのパッケージツアーの予約が2桁増で好調と聞いた。リーマンショックの落ち込みをカバーし、過去最高になりそうという。
さて、日本はというと、観光庁が発表した主要旅行商品ブランド(募集型企画旅行)の取り扱い状況の推移をみると、海外旅行者数は好調だった昨年より減少しているが、国内旅行の人員は、今年4月以降、毎月前年を超えている。また、国内旅行の一人あたりの旅行単価も4月以降前年を上回っている。
価格競争が激化する国内旅行で、LCCなど、より低価格な交通手段が選択肢に加わり、ネットを中心に販売手段も広がった。国内ツアーの単価上昇を通じて、生活者の視点から、時代にマッチした企画商品の本質を「発」「受」の両面から考える時期だろう。
観光産業をとりまく環境は、「失われた20年」という日本の停滞期の中で、情報通信技術の革新、グローバル化、東日本大震災とその復興などを背景に大きく変貌してきた。
グローバル化で世界の事象がほぼ同時に日本に波及するようになった今のツーリズムのメガトレンドは、「デジタルシフト」「グローバル」「体験」だ。世界屈指の旅行会社TUI社やクオニイ社はデスティネーションマネジメントに力を注ぎ、付加価値の高い、独自性のある商品を打ち出し、格安競争を回避して成長を続けている。当社グループの国内外の事業会社も、地域の真の価値を見出し、「選ばれる」地域づくりに関わっていくつもりだ。