2014年を振り返る

【MICE japan2014年12月号より加筆・再掲】2014年の衆議院選挙の日程は、11月21日解散、12月14日投票日であり、2012年と奇しくも似て非なる解散劇。今回は、「みんなの党」が解党し、野党が合流や調整を繰り返しながら準備を進めておられるそうである。激動の2014年を振り返ってみたい。

太田 正隆

太田 正隆 客員研究員

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目次

本コラムは株式会社MICEジャパン社様のご厚意により、当社主席研究員・東京国際大学客員教授の太田正隆コラムがMICEjapan2014年12月号に寄稿いたしましたコラムを加筆・再掲します。

11月16日衆議院解散、そして年末の12月16日に投票日。これは2012年に行われた民主党末期の野田政権最後の年末解散と衆議院選挙である。今回、2014年の衆議院選挙の日程は、11月21日解散、12月14日投票日である。奇しくも似て非なる解散劇。前回は、「たちあがれ日本」が「太陽の党」へ改組し、「新党きづな」が「国民の生活が第一」に合流し、「みどりの風」が政党に改組、「太陽の党」が「維新の党」に合流、「減税日本」と「反TPP・脱原発・消費増税凍結を実現する党」が合流、「日本未来の党」結成など。皆さん、どれだけ覚えておられますか?今回は、「みんなの党」が解党し、野党が合流や調整を繰り返しながら準備を進めておられるそうである。2014年を振り返ってみたい。

1868年4月6日・広く会議を興し、万機公論に決すべし

明治元年(1868年)明治天皇が示した明治政府の基本方針、「五箇条の御誓文」の第一条冒頭には、こう記されている「広く会議を興し、万機公論に決すべし」。これは、旧来の幕府と藩を中心とした政治ではなく、西洋の文明を取り入れ、近代的な国として進んで行こうという決意であり、「人びとの声を大事にして、優れた意見を取り入れ政治を行おう」という意味ということだそうである。まさにMICEそのものであり、コンベンションを通じて「国家の政治は世論に従って決定せよ」(大辞林)ということである。

2014年3月27日・議員連盟

永田町の自由民主党本部において、「自由民主党 展示会産業 議員連盟」の設立総会が開催。(前略)「我々は展示会の重要性を深く認識し、それを国民に向かって広く発信し、我が国の展示会産業を育成する様々な対策を立案、実行していかねばならない。資源の貧しい我が国が今後も持続的な成長を遂げていくためには、世界中から人、モノ、情報が集まる国にならなければならない。我々は、そのための最短の近道こそ、「展示会立国 日本」を実現することであると信ずる。我が国の展示会産業の競争力を強化して、その発展を図り、我が国の貿易振興と経済の発展に尽くすことを目的とし、本議員連盟を設立する。」等の趣旨により自由民主党 展示会産業 議員連盟が発足。これは自民党単独の議員連盟である。
(出典:日本展示会協会

2014年7月虎の門ヒルズを裏から

2014年3月31日・グローバルMICE戦略都市

観光庁はグローバルMICE戦略都市選定・評価委員会を開催した。「平成25年度事業の報告及び評価を行うとともに、平成26年度事業の進め方について議論した結果、平成26年度も引き続き同7都市を対象として事業を実施することとなりましたので、お知らせ致します。今後も、グローバルMICE戦略都市が世界トップレベルのMICE都市に発展し、我が国MICEの国際競争力が向上するよう、国としても支援を行って参ります。」
(出典:観光庁

ご存じの通り、昨年(2013年)6月に海外競合国・都市との厳しい誘致競争に打ち勝ち、我が国のMICE誘致競争を牽引することができる実力ある都市を育成、MICE誘致のポテンシャル等が高い都市を「グローバルMICE戦略都市・強化都市」として選定、国として集中的な支援と、都市の自律的な取組を促している。(グローバルMICE戦略都市・東京、横浜、京都、神戸、福岡、強化都市・大阪府/大阪市・名古屋市/愛知県の合計7自治体)

20年近く前に施行されたMICEに関する法律があることをご存じだろうか。「国際会議等の誘致の促進及び開催の円滑化等による国際観光の振興に関する法律(通称・コンベンション法)」という1996年に制定された法律である。これは「市町村からの申請に基づき、国際会議場施設、宿泊施設などのハード面やコンベンション・ビューローなどのソフト面での体制が整備されており、コンベンションの振興に適すると認められる市町村を、観光庁長官が国際会議観光都市として認定し、当該都市に対して、JNTO(日本政府観光局)が、国際会議などの誘致及び開催支援などを体系的に行う」こととしている。現在、52都市が認定されている。グローバルMICE戦略都市・強化都市として選定されている7つの自治体も含まれている。

当時の第129回国会・運輸委員会における議論を読むと、今日的で普遍的な質疑応答がなされている。(抜粋)

  • 国際会議以外の、見本市、博覧会で、国際的なスポーツへの助成等の仕組みが必要性
  • 負担金(政令市、その他自治体)の違いとは
  • 誘致促進、開催の円滑化の措置に関し「助言、指導その他の援助等(具体的には何か」
  • 都市間、施設間の激しい競争が予想をされるのではないか
  • 国際観光都市との都市間または指定以外の市町村、都市への誘致の割り振り
  • 産業立国一辺倒から、観光立国という目標に立つという、今回の法案の認識
  • 国際会議専門の人材を養成する
  • 国際会議観光都市が一つのグループとして一体感を持って当たっていただく

等であった。

尚、この委員会において主に突っ込んだ質問をした委員(議員)は、建設省出身、コンベンション法提出の前(1993)に衆議院議員、現在山梨県知事の横内正明氏。また、政府委員(運輸省運輸政策局長)は既にお亡くなりになっているが、法案作成に汗をかいた当時の運輸省観光部長は、その後海上保安庁長官、参議院議員を経て現在奈良県知事となっている荒井正吾氏である。興味のある方は、議事録を参考にされたい。
(出典:第129回国会・運輸委員会・第7号(議事録)1996年6月20日

2014年5月30日・ICCA統計

JNTOは、2013年の国際会議開催統計(ICCA)を発表した。「2年連続アジアNo1、世界総合ランキング8位から7位に」。これは国際会議の開催件数について、国、地域、都市などの件数を発表するもので、国別では342件で世界7位(米、独、西、仏、英、伊、日、中、伯、蘭)、アジア大洋州では1位、世界の都市では東京が79件で26位、アジア大洋州では7位である。国内都市では、東京、京都、大阪、神戸、横浜、名古屋、札幌、奈良、福岡、沖縄と上位10都市が続く。
(出典:JNTOプレスリリース

2014年6月24日・日本再興戦略改定

アベノミクス「三本の矢」により始まりつつある経済の好循環を一過性のものに終わらせず、持続的な成長軌道につなげるべく、「日本再興戦略」改訂2014を閣議決定した。こうした文章の全文を読む機会は少ないと思われるが、われわれMICE産業に従事する者にとっては、「テーマ4-2 観光資源等のポテンシャルを活かし、世界の多くの人々を地域に呼び込む社会」(116頁)に留意する必要がある。ここでは「KPI」と「VISA発給緩和」や「消費税免税制度の拡充」に関する事項の次に、以下のように新たに講ずべき具体的施策が取り上げられている。
(前略)
日本再興戦略に掲げた「2013年に訪日外国人旅行者1,000万人」の目標を達成したことを受け、また、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等の開催という絶好の機会を捉え、2020年に向けて、訪日外国人旅行者数2,000万人の高みを目指すこととし、これをKPIに加える。そのため、本年6月に観光立国推進閣僚会議において決定された「観光立国実現に向けたアクション・プログラム 2014」に基づき、以下のような施策に取り組む。

  • 2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等を見据えた観光振興
  • インバウンド(訪日外国人旅行者)の飛躍的拡大に向けた取組
  • ビザ発給要件の緩和など訪日旅行の容易化
  • 世界に通用する魅力ある観光地域づくり
  • 外国人旅行者の受入環境整備
  • 国際会議等(MICE)の誘致・開催の促進と外国人ビジネス客の取り込み

(出典:内閣府

キーワードは、オリンピック・パラリンピック、訪日外国人2,000万人を目指すインバウンド振興と並んで、「国際会議等(MICE)の誘致・開催の促進と外国人ビジネス客の取り込み」が掲げられている。

2014年11月20日・超党派議員連盟

「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連、通称・カジノ議連)は衆議院解散に伴い、カジノ解禁を含む統合型リゾート(IR)の整備を求める法案についていったん廃案となった。依存症をはじめとする負のイメージが象徴的なカジノ論議が活発になされた印象が強いが、実はMICEとの関係が強いことはあまり意識されていない。統合型リゾート(IR)の「統合」とは、「カジノ」と「会議施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設、その他の観光に寄与すると認められる観光施設が一体となっている施設(略)」である。観光に寄与する施設に「会議施設、展示施設」等が統合されると明記されている。

統合型リゾート(IR)は、観光振興、地域振興など多くの期待がなされ、横浜、大阪、沖縄、その他多数の都市で誘致すべく積極的な活動が見られたが、一旦ここで立ち止まり。また、MGMをはじめSANS等の大手カジノオペレーター企業も日本への投資には大きな意欲を持っている。1月以降の動きに期待を持っていると思われる。

超党派の国際観光産業振興議員連盟は、自民党、日本維新の会、公明党、みんなの党、生活の党、一部の無所属議員で構成されており、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」は、来年1月の通常国会に法案を再提出されるそうである。カジノ議論だけではなく、MICE施設及びMICE振興に関する議論も活発にされることを期待する。

まとめ

1996年に産業立国から観光立国へ移行する時期に「コンベンション法」が制定され、2002年に自民党が中心になって「国際観光産業としてのカジノを考える議員連盟」が立ち上がり、2006年から2010年にかけてシンガポールでのIR(統合型リゾート)の解禁と成功を横目に超党派議連で「国際観光産業振興議員連盟」が発足して、MICEが統合施設の核の一つとなり、2006年第一次安倍内閣の所信表明で、安倍総理が「今後5年以内に、主要な国際会議の開催件数を5割以上伸ばし、アジアにおける最大の開催国を目指します」延べ、2008年10月に麻生政権下で観光庁が発足し、一年後の2009年7月には民主党へ政権交代し、政権交代直前に策定された「MICE推進アクションプラン」に従って2010年に「Japan MICE Year」を本格稼働、民主党政権下で「事業仕分け」によりMICE の開催・誘致の推進・事業の費用対効果が疑問、施策の重点化を図るべきと事業見送りされた。

2011年の東日本大震災により訪日外国人が激減する中、国際会議の開催中止、延期もあったが、7月には京都で第 23 回 国際血栓止血学会(ISTH)が開催され、海外から4千人を超える参加者を迎え、2012年暮れには自公連立による政権交代で安倍内閣が発足、2013年悲願であった訪日観光客が1千万人を超え、2020年東京オリンピック・パラリンピック誘致が決定した。

激動の2014年も間もなく終わり、新たな2015年のMICEもエキサイティングな年になることを期待する。

追記(12月16日)
圧倒的な強さで自公は2/3を上回る議席を獲得した。アベノミクスに象徴される成長戦略の中で、観光立国推進に関する事項は多い。国家戦略特区では、例えば「福岡市グローバル創業・雇用創出特区」として、エリアマネージメントの中で、MICEの魅力向上及び更なる誘致促進を図ることが謳われ、東京圏では都市再生・まちづくりやエリアマネージメントの中でMICEに対する期待が述べられている。経済・外交等多くの課題はあるとしても、観光立国推進という立場から見れば、前政権のように突然の事業仕分けといったアクシデントのようなことはなく、地域や事業者が主体的に遂行することが出来る体制は整ったということである。

富士山