100万缶の日本への入口

印刷する

新潟県の菊水酒造が出荷を始めた、英語パッケージの生酒「ふなぐち菊水一番しぼり」、年間100万缶の出荷を目指す

新潟県の菊水酒造が出荷を始めた、英語パッケージの生酒「ふなぐち菊水一番しぼり」、年間100万缶の出荷を目指す

数字を
読み解く

新潟県の菊水酒造は、今年8月、米国向けに英語でデザインした生酒「ふなぐち菊水一番しぼり」の出荷を始めた。酒はもともと光に弱く、特に生酒は、酒本来の風味を残すために加熱による殺菌を行わないことから、非常に繊細な性質を持ち、商品化は困難とされていた。しかし、同社はしぼりたての美味しさをより多くの人に届けたいと、遮光性の高いアルミ缶を採用するなど試行錯誤を重ね、1972年に日本で初めて缶入り生酒の商品化にこぎつけた。

そのような商品の歴史を海外の消費者にも正しく伝えるため、新しく英語でデザインされた缶には、なぜアルミ缶に入っているのか、生酒とは何か、など詳細な説明が加えられている。従来は、日本語表記の缶に原材料など最低限の情報が記載されたシールを貼って輸出をしていたが、商品に対する海外からの問い合わせが多くなったためだ。

海外での日本食の広がりや、和食の無形文化遺産登録などがきっかけとなり、より深く日本酒、ひいては日本文化を知りたい、というニーズが高まっていることが背景となっているのだろう。菊水酒造は新デザイン缶の出荷を機に、同製品を米国以外の地域へも広げる予定で、年間100万缶の出荷を目指すとしている。

菊水酒造は国内でも清酒の普及に注力している。ワインボトルの再利用や、新しいパウチ容器を国内清酒市場で初めて採用するなどエコと利便性を意識した商品開発もその一つだ。また、「酒づくり」は、その先にある「場づくり」ととらえ、日本酒を通じた楽しい「こと」を追求するために「菊水日本酒文化研究所」を2004年に立ち上げた。酒や食文化についての研究や新商品開発、杜氏の人材教育、日本酒に関するイベントを通じた交流などの機能を持つ。このような取り組みにより、同社は自社製品の普及だけでなく、清酒市場の拡大、清酒を取り巻く文化の普及に尽力してきたと言える。今回の新しいデザイン缶の発売も、海外の消費者にとって、日本へのより深い興味の入口となることが期待される。