生産設備を1.8倍に拡充

印刷する

地ビール(クラフトビール)業界首位のヤッホーブルーイング、生産設備を1.8倍に拡充

地ビール(クラフトビール)業界首位のヤッホーブルーイング、生産設備を1.8倍に拡充

数字を
読み解く

地ビールが注目を浴びています。地ビール業界首位のヤッホーブルーイングは2013年後半にキリンビールからの出資を受け生産量を増強、ローソンなど他業種と共同開発した限定ビールも話題となっています。

1994年にビール製造業免許が緩和(いわゆる「地ビール解禁」)され、急成長した地ビール市場でしたが、ブームが去った2003~2004年頃には一旦生産量が落ち込みました。しかしながら、その後は回復基調に転じ、2013年には対前年比で14.6%、2014年には同7%の増加となりました(*1)。ビール類全体(ビール、発泡酒、第3のビール)の課税出荷数量は、2005年から10年連続して前年割れであることを考えれば、小さいながらも地ビール市場は堅調と言えるのではないでしょうか(*2)。

東京商工リサーチの調査によれば、好調の要因として、「ワールド・ビア・アワード」などのコンテストやビア・フェスタなどのイベントで消費者の関心を惹きつけたこと、直営店の増加、様々な種類の地ビールを集めたビア・パブの増加、コンビニやネットなど販路の拡大などが上げられています。

また、このようなメーカー側の努力に加えて、消費者意識の変化も背景として考えられます。アサヒグループホールディングス お客様生活文化研究所が2014年11月に実施したアンケート結果をみると、普段の消費において「プチ贅沢をする」という回答者の割合は3年連続で増加し、83.8%となりました。経済が低迷する中で、価格競争に慣れた現在の消費者は、ただ「安い」だけの商品には関心を持たず、節約するところは節約し、自分がこだわりたい部分にはお金をかけるメリハリ消費が巧みで、価格だけではない「付加価値」を重視するようになってきています。また、消費増税の先延ばしや雇用環境の改善による所得の増加傾向は、特に若い世代の消費意欲にプラスとなっており(図1~図3、*3)、2015年は、少し余計にお金をかけても心を満たすことができる「プチ贅沢」消費が注目できそうです。

コンビニに並ぶヤッホーブルーイングのクラフトビール

コンビニに並ぶヤッホーブルーイングのクラフトビール

ヤッホーブルーイングとアマゾンとの共同開発である「月面画報」は、「人とは違うこだわりを持つ男性が自分ひとりだけの世界を楽しむ時のビール」をコンセプトとし、フルーティーなアロマが独特なビールですが、2014年12月の発売以来、数か月で「クラフトビール」の検索数が急増するなど、好調に推移しています。地ビールは、従来のビールや発泡酒と比較して2~3倍の価格で販売されており、決して安くはありませんが、現在の消費者のこだわりたい気持ちをうまくとらえた商品と言えるでしょう。

地ビールは、日本の様々な地域で、それぞれの特色を生かした商品づくりが行われていることから、プレミアム感と共に、地域の魅力を伝える手段としても期待ができます。4月に開通した北陸新幹線では、農業法人「わくわく手づくりファーム川北」(石川県川北町壱ツ屋)が女性に飲みやすい白ビールの提供を始めました。さらに、新潟県胎内市にある胎内高原ビール園など、製造過程を見学できるツアーやレストランなどを併設する工場なども出てきています。単なる観光旅行だけではなく、旅行先でどんな体験ができるかを重視する旅行者も増える中、旅先での魅力的な体験の一つとして地ビールを楽しむ人も増えるのではないでしょうか。

図1、単一回答

図2、複数回答

図3、複数回答