2020年までにデジタル収入を「4億ドル→8億ドル」へ
デジタルメディア企業への転換を図るニューヨークタイムズ、2020年までにデジタル収入を「4億ドル→8億ドル」へ
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2015年10月、ニューヨークタイムズは現在のデジタル収入4億ドルを2020年までに8億ドルとする目標を示しました。また、デジタル版の有料購読者数は2015年に25万人増加し、デジタル版立ち上げから4年半で100万人を突破、紙ベースの購読者数110万人に迫る勢いとなりました。同社は世界各地に張り巡らされた取材網を駆使した取材力で、地方紙でありながらも米国を代表する高級紙としての地位を確立しています。
今年7月に日本経済新聞社がデジタル事業に強いフィナンシャルタイムズを買収するなど、新聞各社がデジタルメディア企業への転換にしのぎを削っていますが、インターネットで簡単に情報が得られる時代、有料購読モデルは難しいとされてきました。ではなぜ、ニューヨークタイムズは8割が広告収入だったビジネスモデルから脱却を果たしつつあるのでしょうか。
大きな要素の一つとしては、モバイルへのシフトが単なる紙媒体からデジタルへの変化ではなく、人々の消費や情報収集の行動を根本から変えたということを認識し、使い古された言葉ではありますが、本当の意味での『顧客第一主義』とは何かを改めて問い直したことだと考えられます。
具体的には、紙媒体であれ、デジタルであれ、基本に忠実に「世界で最も重要なニュースを発掘し、読者へ届けること」を第一義としたこと、それに加え、興味あるジャンルやホームタウンにちなんだニュースを配信するなど、個人個人に最適なニュースを届けるパーソナライズを強化したことがあげられます。情報があふれ、自分で情報の優劣をつけることが難しくなっている今、自分にとって何が大切かを教えてくれる存在の重要性は増しているからです。
伝えるためのツールとしても、動画や画像を多用するなど、現在のデジタルユーザーのニーズに合わせた工夫を凝らしています。
また、グローバル化への対応も積極的に行い、デジタル版の多くは海外からの購読者数が占め、今後もシェアは伸びるとしています。
このように、これまでダメだとされてきた有料購読モデルのようなビジネスモデルであっても、捉え方を変えることで新たな局面が開かれる場合も少なくありません。また、今後は技術の進化によって、不可能であったことが可能となることもますます増えるのではないでしょうか。自らが抱える問題に真向から取り組んだニューヨークタイムズの挑戦には学ぶべき点が多いと考えられます。