もう一つの4,000万人とEU
日本と同じく2020年外国人旅行者数4000万人を目指すイギリス、EU離脱による影響は・・・?
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日本政府は3月30日、2020年までに訪日外国人数を4000万人とし、買い物などによる消費額を2015年の2倍超となる8兆円に増やす、新たな目標を掲げました。
前オリンピック・パラリンピックの開催国であるイギリスも日本と同じく、2020年までにイギリスを訪れる外国人旅行者の数を4000万人とする計画を2009年に設定しています。
2009年から2015年までにイギリスを訪れた外国人旅行者の推移をみると、2010年は微減となったものの、その後は順調に推移をしています。これは英国全土を対象とし、非業界、国内外等のあらゆる組織と協力したGREAT Britain image campaignが功を奏した結果と考えられます。この順調な動きに影を落としそうな懸念事項として、今起こっているEUからの離脱運動があります。もしイギリスがEUから離脱した場合、観光産業にはどのような影響があり得るのでしょうか。
イギリスは1973年、最初の9カ国の一国として加盟以来40年あまりの間、主要国としてEUをけん引してきました。しかしイギリス国内におけるEUからの離脱運動が活発化し、今年の6月23日、EUに“残るべきか、残らざるべきか”についての国民投票が実施されることとなりました。国民投票の結果いかんでは、金融や貿易などEUの根幹を揺るがすことにも繋がりかねません。もしイギリス国民がEUを離脱するという判断を下した場合、イギリス、およびヨーロッパ全体に多大な影響を与えることは容易に想像できます。欧州経済研究センター(Center of Economic Performance)は、イギリスがEUを離脱した場合、最大でGDPが9.5%減少するという試算を出しました。これはリーマンショックにも匹敵する数字です。イギリスにとってEUは重要な貿易先でもあり、もし同一の経済圏ではなくなれば、様々な物品に関税がかかり、物価上昇にもつながります。
また、旅行者への影響を考えてみた場合、たとえば、イギリスと他のEU諸国間を移動するにあたって、空路にしろ、航路にしろ、これまでよりセキュリティチェックや入国管理手続きなどに時間がかかるようになるでしょう。イギリスの出入国におけるVISAの要件が厳しくなる可能性もあります。
また、EUのイメージ自体も“統一”から“孤立”へと向かいます。イギリスが負担してきたEUの加盟費用がなくなることも加盟国にとっては打撃です。ユーロなどの金融や経済的な問題が拡大する懸念も出てくるでしょう。
今後、アジアやアメリカの旅行者が休暇を楽しむ旅行先としてヨーロッパを選ばなくなることも十分考えられます。イギリスが目標として掲げている2020年4000万人の目標を下げなくてはならない日がくるのか、その動きが注目されます。