100位中92位に1軒ランクイン
世界中で広く愛読されている「Travel + Leisure」誌が2017年7月に「世界のホテルトップ100」を発表した
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Travel+Leisure(以下T+L)は、世界中で広く愛読されている旅行雑誌です。アメリカのオバマ前大統領もTravel+Leisureで特集されるホテルを訪れることを無上の楽しみにしていたといいます。この雑誌で毎年発表されるベストアワードの結果は、行きたい旅行先リストを常に更新したい旅好きの人々にとって心待ちにしているものであり、観光業界で働く人々も、その結果に注目しています。アワードは10部門に分けられており、都市部門では、2014年・2015年と2年連続で「京都」が1位になったことを覚えている方も多いと思います。今年(2017年)の7月11日に、T+Lは「The 2017 World’s Best Hotels」(世界のベストホテル)」を発表し、ベスト1ホテルには、インドネシアのニヒスンバ島リゾート(Nihi Sumba Island、旧Nihiwatu)が2年連続で選ばれました。
ニヒスンバ島は、インドネシアの島々の中でも最も開発の進んでいない島の一つで、未開に近いと言えます。そんな島にホテルを作るにあたり、オーナーは「ここでの滞在は日常生活からの逃避ではなく、元気で充実した生活に戻ること」である。滞在することの心地よさだけでなく、「目的のある休暇を過ごすこと」や、「旅行先として意味がある場所である」ことをホテルのコンセプトとしました。オーナーはホテルの開業と同時期にSumba Foundation(スンバ基金)の設立をし、島の人々の生活の改善にも貢献しています。これまでに60の井戸が掘られ、240の水場から学校に水が供給されました。5つのクリニックも設立され、栄誉失調の管理プログラムの実施でマラリアの罹患率は85%まで減少しました。また、リゾートで働く場を提供することによって島の人々の貧困を減らす試みにも取り組んでいます。開発途上の地域にあるリゾートホテルは、海外資本ならなおのこと、住民の生活とは全く別世界のものとして切り離された環境にあることも少なくないでしょう。しかし案外旅行者は現実を見ているのではないでしょうか。二ヒスンバ島リゾートで働いている95%は住民です。さらに島の村でも旅行者と島民が交流する環境があり、スンバ文化を体験できます。住民の安心安全な生活環境が保障され、住民が幸せであればこそ、その地の魅力が増すのだと思います。
さて、アジア地域をみてみると、TOP100にランクインしたのは、インド(6軒)、タイ(3軒)、中国(2軒)、ベトナム(2軒)、カンボジア(1軒)、日本(1軒)で、日本ではセントレジスホテル大阪が唯一、92位にランクインしました。日本のホテルが10位以内にランクインするためには、いえ、もっと言えば1位になるためには、何が必要なのでしょうか?日本はすでに細部にわたる気遣いや時間に関する正確さなど、質の高いサービスを提供する国として知られており、潜在的な可能性を大いに秘めています。今年の調査結果は、旅行者が大自然の中で高品質な設備やサービスを享受し、自分の生活の新たな一歩を進めるために、心や身体のリフレッシュをしたいと考えていることを示しています。また、日本を訪れる外国人旅行者に注目したJTB総合研究所の調査では、2回目以降の日本訪問においては、行先として、日本の自然が感じられる場所が好まれる傾向がることがわかっています。T+Lの調査は読者の経験をベースにしています。これからは、全体の評価ポイントとして、設備やサービスだけでなく、ホテルやリゾートが立地する地域への貢献度といったプライスレスな価値も考慮されていくのではないでしょうか。日本では相手への思いやりの気持ちは素晴らしい習慣の一つです。今まではホテルと地域への思いやりを別々に考えていた方が多いかもしれませんが、地域に貢献する事がホテルの評価に繋がり、日本が取り組もうとしている富裕層のお客様が求めている体験と世界ベスト1に近づくのではないでしょうか。
(エド)
出典:Travel + Leisure, CNN Travel
参考資料: