関税が3.2%から0(撤廃)へ

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今年7月6日に日本が欧州連合(EU)との間で大枠合意した経済連携協定(EPA)で、緑茶のEUへの輸出関税が現在の3.2%から0(撤廃)となりました。

今年7月6日に日本が欧州連合(EU)との間で大枠合意した経済連携協定(EPA)で、緑茶のEUへの輸出関税が現在の3.2%から0(撤廃)となりました。
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日EU・EPA 農林水産物の大枠合意の概要(農林水産省)

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今年7月6日に日本が欧州連合(EU)との間で大枠合意した経済連携協定(EPA)で、緑茶のEUへの輸出関税が現在の3.2%から0(撤廃)となりました。今、日本の緑茶が海外で人気です。和食や健康ブームで需要が急増し、2016年の緑茶の年間輸出額は116億円(前年比114%)でした。関税の撤廃で、今後さらに輸出に弾みがつくとみられます。緑茶の国内消費は減少傾向ですが、海外市場の拡大は業界にとって生産拡大のチャンスといえます。

公益社団法人日本茶業中央会は、「抹茶」の定義を広く解釈する検討をはじめました。抹茶は、「抹茶ラテ」のような飲用のほかにも菓子、料理、調味料など用途が広く、海外での緑茶人気のけん引役は抹茶であると言われています。抹茶とは「碾茶(てんちゃ)を石臼でひいたもの」、碾茶(てんちゃ)は、「茶の木を2~3週間わらなどで覆い日光に当たらないように育てた茶葉をもまずに蒸して乾燥させたもの」をさし、生産には手間と時間がかかるものです。さらなる輸出拡大に向けて抹茶の増産を促すため、日本茶業中央会は、わらなどで覆う期間を短縮し、石臼でなく工業用ミルでひいたものも「抹茶」として認める検討を始めました。しかしながら、このことは、伝統的な製法を否定するものではなく、従来の製法で生産される抹茶は「本抹茶」として定義しなおし「本物」の価値を大切に守っていく方向です。茶道という日本文化を背景に伝承されてきた製法にも改めて注目が集まると思われます。

日本に喫茶の習慣が伝来したのは平安時代、16世紀からの茶の湯の歴史は、隆盛と衰退を繰り返しながら、現代まで連綿とつながっています。戦後、日本文化の喪失に危機感を持った哲学者の久松真一が、茶道とは「喫茶を契機として創造せられた、芸術、道徳、哲学、宗教など文化のあらゆる部面を含んだ総合文化体系である」と唱え、茶道界は、この説をもとに「日本固有の文化の保存」を茶道の存在意義のひとつとしてきました。茶道が日本を代表する文化として継承されてきたことと、今日まで伝統的な製法を守りながら抹茶の生産が続いてきたことは切り離すことができません。外国人は、茶道で使われる抹茶と、抹茶ラテや抹茶チョコで使われる抹茶が同じものであることを知ると驚きます。身近にあるMatchaが日本文化への興味のきっかけとなることもあるでしょう。輸出拡大とともに、抹茶のもつ物語もあわせて伝えていく努力が大切です。

出所:
日EU・EPA 農林水産物の大枠合意の概要(農林水産省)
日本茶輸出促進協議会 日本茶輸出動向 緑茶の各国輸出実績