世界の二酸化炭素排出量の8%
2018年のシドニー大学の新しい研究によれば、旅行・観光による排出量の合計は世界全体の排出量の8%にせまる。
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2017年に世界の旅行者人数は13億2,200万人を記録しています。2018年のシドニー大学の新しい研究によれば、世界の観光活動によってもたらされる二酸化炭素排出量は、前回の発表のほぼ三倍となっています。この研究では、旅行(移動)そのものだけでなく、旅行者の飲食や、ホテル、ショッピング、および関連するインフラなどの旅行に関するすべての場面における排出量を考慮しています。2009年から2013年に160か国での二酸化炭素の流れをもとにした計算によれば、旅行・観光による排出量の合計は世界全体の排出量の8%近くとなっています。
現在、旅行・観光産業は、世界中で10人に一人が従事し、年間7兆ドルを生み出す産業となっており、二酸化炭素排出量に関しても大きな影響を与える存在となっていると言えるでしょう。研究によれば、国内の旅行で排出量が多い国は米国、ドイツ、中国、インドであり、 一方、旅行先で排出量が多いのはカナダ、 スイス 、オランダ、およびデンマーク、新興国であるブラジル、インド、中国、およびメキシコの存在も大きくなりつつあります。また、同研究では旅行者の収入による排出量の差にも注目しており、収入の低い人々は、旅行においてなるべく公共交通機関を使おうとするのに対し、収入の高い人々は、飛行機やその他の交通手段を利用することで排出量が高くなります。同じ状況は飲食や買物の好みにもみられます。
旅行の目的地の側から見ると、観光地として人気のある小さい島では、旅行者や観光産業の二酸化炭素排出量が島の年間排出量の80%を占めるという例もみられます。
世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)は、旅行・観光産業において二酸化炭素排出量削減の努力はなされており、多くの空港、ホテル、レストラン、および旅行の目的地において実施されている持続可能なプロジェクトによる結果は、まもなくでるであろうと言っています。人々は最近のケープタウンにおける深刻な水不足のニュースを知ることによって、気候変動が水のような地球資源に与える影響を認識することになりました。
この研究で、日本は二酸化炭素排出量の多い国の上位には入っていません。日本政府は旅行や観光産業の発展にプライオリティを置いています。私は、日本政府が持続可能なツーリズムに軸足を置くことで、世界が直面している気候問題への重要な国際的貢献者として認められる機会となると信じています。
(エド)