10%、20兆円

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「着地型観光」は2016年の世界の旅行消費額の10%を占め、2020年には予約総額は20兆円に達すると予測される

「着地型観光」は2016年の世界の旅行消費額の10%を占め、2020年には予約総額は20兆円に達すると予測される
Source
Phocuswright

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「イルカと泳いでみたい!」「自分で収穫したお米で自分だけの地酒を作ってみたい!」など、興味やテーマは人それぞれですが、「何か新しい体験や学びをしてみたい」と思ったことがきっかけで旅に出かけた経験は、多くの人が持っているのではないでしょうか。今、そのような体験型旅行である「The tours and activities(以下「着地型観光」)」が注目されています。米国の調査会社Phocuswrightの調査によると、「着地型観光」は年々増加傾向で、2016年には、世界の旅行消費額の中で10%となり、航空機(40%)や宿泊費(33%)に次いで3番目に大きいシェアを占めました。

同調査によれば2016年の「着地型観光」の予約の総額は1,350億ドル(約15兆円)、2020年には1,830億ドル(約20兆円)に達すると予測されています。ここ数年の動きをみても、エクスペディア、トリップアドバイザー、エアビーアンドビーなど主だった企業がこの分野に進出し、また、多くのテクノロジーベンチャーを含むさまざまな業界がこの市場に注目して数百万ドルを投資しています。この分野には大きな発展が期待されているのです。

しかしながら「着地型観光」を運営する組織は、規模の小さい事業体が多く、予約や顧客管理の方法がばらばらで、デジタルによる効率化が進んでいないことも事実です。同じ米国のSkiftの調査によれば、世界の「着地型観光」の提供者の約55%が予約システムを持たず、そのうち67%は電子メールやカレンダー記入など、従来型の方法で予約を管理しています。デジタル化が進まなければ、手作業が多い、マーケティングができない、決済方法が不便など、販売を伸ばしていくうえで多くの課題が生じます。最近では、スマートフォンを利用し、間際やタビナカ(旅行中)に様々な予約を行うようになってきていますが、そのようなニーズに対応することも難しくなります。日本でも訪日外国人向けの「着地型観光」に注目が集まる中、この分野における消費額を世界レベルに上げるために、旅行前、旅行中の情報提供から予約、決済までをスムーズにする必要性が指摘されています(観光庁「『楽しい国日本』の実現に向けた観光資源活性化に関する検討会議」)。購入者である旅行者にとっても、ストレスなく予約ができ、安心して参加できることはリピートや友人知人への推奨につながり、より市場を活性化させるでしょう。しかし同時に、「着地型観光」の運営を健全に維持していくためには、デジタル化だけではなく、同じ地域の提供者同士の連携や、販売側と提供側、購入者とのパートナーシップ、サプライヤーを含むステークホルダー間のコミュニケーションの重要性も忘れてはならない要素の一つです。

(TOM)

出典:Phocuswright
    Skift