600人の村に8000人

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冬季ライトアップの期間中、人口600人弱の岐阜県白川村には一日8,000人を超える観光客が訪れます

冬季ライトアップの期間中、人口600人弱の岐阜県白川村には一日8,000人を超える観光客が訪れます

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今年のゴールデンウィークは、暦上で初めての10連休となります。旅行や外出が楽しみですが、連休といえば観光地の混雑を思い浮かべる人も多いでしょう。

今冬、人気の観光地で、「混雑」を回避するための新しい取組みが行われました。岐阜県の白川村で行われる冬季ライトアップは、合掌造り集落が雪景色に浮かびあがるイベントで、例年1月~2月の期間中には人口600人弱の集落に1日8,000人を超す来場者があり近年は外国人観光客も多く訪れています。渋滞、違法駐車、観光客と住民とのトラブル等から、イベントの存続を危ぶむ事態とまでなっていましたが、今年から、駐車場と展望台行きシャトルバスの乗車券の完全予約制を導入し、駐車場では駐車できる台数を450台に限定しました。結果的に来場者は減少したものの、ゆっくり過ごす人が多かったためか食事処や土産処の売上などの経済効果は例年とほぼ変わらなかったとの報告もあり、来年以降の取組みに注目です。

2018年の世界の海外旅行者数は14億人を突破し、2030年までに18億人に達すると予測されています(国連世界観光機関発表「世界観光統計」より)。旅行者の増加で観光地における「オーバー」状態が目立つようになり、「オーバーツーリズム」という言葉がよく使われるようになりました。昨年はオックスフォード辞典が選ぶ“Words of the Year 2018”の一つにノミネートされるまでになっています。

そのような中、地域住民や自然環境への悪影響を最小にしながら、観光産業の持続可能な発展を実現しようという取組み「レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)」が注目されはじめました。観光に携わるすべての人が、環境、社会、文化、経済への影響に責任を持つべきであるという考えで、観光事業者だけでなく旅行者にも持続可能性を意識して運営されるツアーやホテルの選択を促すものです。英国の「ワールド・トラベル・マーケット」では、「レスポンシブル・ツーリズム・アワード」を実施しており、2018年には、ペットボトルの利用量を大幅に減らしたサファリキャンプ企業Wilderness Safarisや観光客と地域との交流を実現したワインファームSpierなどのアフリカの企業が表彰されています。
2030年、「レスポンシブル・ツーリズム」を意識して旅をすることを「かっこいい」と思う旅行者が、日本でも世界でも増加していることを願います。