6ヶ月の壁は超えられますか?
人が自ら生活習慣を変え定着するまでに、5段階の「行動変容のステージモデル」があるといわれます。これらは「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期(行動を変えて6ヶ月未満)」→「維持期(行動を変えて6ヶ月以上)」と心の状態や実践の程度に応じて分けられます。
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みなさんは今日何歩くらい歩きましたか? 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言で、私たちの生活は大きな影響を受けました。外出自粛要請によるテレワークやオンライン授業が広がる一方で、運動や休養・ストレスといった生活習慣の課題も出ています。ある調査では、1日あたりの歩数は、新型コロナの影響前は1日3,000歩未満の人が17.8%であったのに対し、緊急事態宣言前後では28.4%という調査結果も出ています。*
一方、JTBの調査によると、緊急事態宣言下における生活の変化として、「家での体操やトレーニング」が「増えた・始めた」と回答した人は25.1%、「散歩・ジョギング」では20.1%と、いずれも「減った・やめた」より多い結果でした。自粛生活における運動不足から、健康に対して意識が向けられていることが考えられます(図)。しかし肝心なのは、始めた運動習慣が持続できているかということです。
図:コロナ禍以前と比べた緊急事態宣言下での生活の変化
出典:JTB&JTB総合研究所 「新型コロナウイルス感染拡大による、 暮らしや心の変化および旅行再開に向けての意識調査(2020)」JTB調査未発表分
人が自ら生活習慣を変え定着するまでに、5段階の「行動変容のステージモデル」があるといわれます。** これらは「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期(行動を変えて6ヶ月未満)」→「維持期(行動を変えて6ヶ月以上)」と心の状態や実践の程度に応じて分けられます。外出自粛生活が始まり、運動量の減少から健康を意識し始める「関心期」、散歩・ジョギングの目標や頻度などを検討する「準備期」を経て、身体活動を実践していく「実行期」に入る。緊急事態宣言がきっかけで運動を始めた人は、今まさに実行期といえそうです。
「維持期」とは、「実行期」に入り6ヶ月以上継続した状態を指しますが、これが習慣化できるかの最大のポイントです。厚生労働省は「運動を習慣としている人」の定義を「1回30分以上の運動を週2回以上実施、1年以上継続している者」としていますが、その割合は、20~64歳の男性では26%、女性では20%です。
運動を続けられない要因は、身体の状態・運動時間の確保など、様々にあると考えられますが、嗜好性、つまり自分が「好きになる・楽しむ」ことをどれだけできるがカギになるのではないでしょうか。
現在、企業も、人々が楽しみながら運動を行い、健康維持を後押しするために様々なサービスを提供しています。日本コカ·コーラ株式会社の「Coke ON」というアプリは、目標歩数達成や累計歩数に応じ、特典として飲料に交換できるスタンプを発行する取組みをされています。住友生命保険相互会社の「Vitality」という保険商品は、健康プログラムへの取組みを続けることで保険料が割引になり、健康増進へのモチベーションアップを促しています。また、日本航空株式会社は「JAL Wellness & Travel」においては、日常生活で楽しく健康的にマイルがためられるように、目標歩数を達成することでマイルが獲得できる仕組みを作っています。
このように心理的に好きなことや楽しみになることと、運動を組み合わせることは、継続に効果的です。コロナの影響は、人の健康に対する行動変容を促す好機であるとも感じます。コロナ禍で運動を始めたみなさん、維持期に入るまで、あと少しです。(HT)
(出典1)株式会社リンクアンドコミュニケーション 2020年4月「新型コロナウイルス感染拡大による身体状態や健康行動の変化に関する調査」による
(出典2)eヘルスネット 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト