最大1200億ドルのGDP
新型コロナによるパンデミックがアフリカにもたらす影響により、最悪の場合、観光産業によるGDPが2019年からマイナス71%である、1,200億ドルの減少となる可能性があります。
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アフリカにおける観光産業は、長い間多くの国で主要な産業となっており、2019年全体で1680億ドルの総収入、2460万人の雇用を創出しています。観光産業がアフリカのGDPに寄与している割合は、2019年で7.1%、他のエリアと比較するとヨーロッパは9.1%、東南アジアは12.1%です。アフリカで観光産業のGDPに対する寄与額が最も高い国はモロッコであり、国際線の到着旅客数は2019年1,293万人、続いて南アフリカが1,023万人となっています。教育水準とソーシャルメディアの普及が高まるにつれ、旅行文化はアフリカの若い世代にとって、一般的になりつつあります。彼らの可処分所得のほとんどはアフリカ以外への海外旅行、そしてアフリカ内の旅行にも使われており、中でも南アフリカはアフリカ人が最も訪問する国です。
アフリカの観光産業による総収入は、今年の初めには、前年を上回ると予想されていましたが、多くの国は国外からの観光客に依存していたため、新型コロナの影響で止まりました。現在、アフリカの観光産業はとても小さなマーケットである、地元の観光客に頼らなければならない状況にあります。また、同時に新型コロナによる崩壊を止めるため、変化に適応する方法を見つけなければなりません。新型コロナによるパンデミックがアフリカにもたらす影響は、最悪の場合、観光産業によるGDPが2019年からマイナス71%である、1,200億ドルの減少となる可能性があります。失業と経済の損失によるこの結果は、アフリカの観光産業が成長するために取られてきた、数々の施策を打ち消しています。
ケニアなどでは、休日の利用や会議のキャンセルにより、ホテルの稼働率が低下し、多くの観光地では稼働率が7%未満と報告されています。また食品や飲料を提供するなどのサービス産業も、スタッフを解雇し、生産を削減しなければなりませんでした。南アフリカは最も人気のある観光地の1つですが、テーブルマウンテンのケーブルカーが、ほとんど動かない状況を目にするほど、以前では考えられない大きな損失が発生しています。かつて多くの観光客が訪れていた、有名なピラミッドのあるエジプトは、今もさびれたままであり、エチオピア政府も観光地が無人であることによる、巨大な損失の穴埋めに取り組んでいます。
現在アフリカでは、新型コロナの新規感染者数の増加率は鈍化しており、ウイルスの蔓延を抑制するために、各国政府が実施した対策の効果が出つつあるようです。南アフリカ、エジプト、ナイジェリアなどの人口の多い国では、症例数が減少しています。観光産業における損失は莫大で、新型コロナと戦うためには、オペレーションをデジタル化しなければいけない、という現実に直面していますが、多くの国は希望を持っています。また各国は新型コロナ対策の規制が解除された後、観光組織の回復を助けるための補助金も確保しなければなりません。
今後は観光地が確実に回復するための対策が必要となり、これには様々な旅行制限の解除や、安全な旅行を保証するために、世界保健機関(WHO)が定めた安全衛生手順の採用などが含まれます。各国政府はアフリカの経済を低下させる原因になる、観光産業の失業率の増加を防ぐために、補助金の支給を行うなど、観光組織を支援する必要があります。(TOM)