5万円で乗り放題

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中国東方航空は2020年6月18日に、中国初の定額乗り放題航空券である「Wild your weekend(周末随心飛)」の第1弾を3,322人民元(約5万円)で発売しました。

中国東方航空は2020年6月18日に、中国初の定額乗り放題航空券である「Wild your weekend(周末随心飛)」の第1弾を3,322人民元(約5万円)で発売しました。
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(出典)共同通信PRワイヤー配信 中国東方航空プレスリリースより(2020.7.13)

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日本の格安航空会社であるPeach Aviationが、昨年末、2021年2月の1カ月間利用限定で、国内全路線を対象に定額乗り放題キャンペーンを実施すると発表しました。航空券のサブスクリプションサービスとしては、日本で初めてです。これに先立ち、中国では新型コロナウイルス感染症のパンデミックを封じ込めた後、航空会社が大規模な航空運賃のプロモーションを開始していました。

中国東方航空は2020年6月18日に、中国初の定額乗り放題航空券である「Wild your weekend(周末随心飛)」の第1弾を3,322人民元(約5万円)で発売しました。これは2020年12月31日までの週末限定で、香港、マカオ、台湾を除くエコノミークラスの国内線を、無制限に利用できる航空券です。2020年6月30日時点で、この航空券は10万枚以上販売され、総売上高は3億人民元以上になると見込まれています。第2弾は2020年10月に発売され、2021年6月27日まで利用できます。中国東方航空に続き、海南航空やその他の国内航空会社も、さまざまな割引商品の販売を開始しています。

中国における乗り放題航空券は、通称“随心飛”と呼ばれており、現在は2つの航空会社が異なる種類の商品を発売しています。1社は、利用日や時間帯を限定した、中国東方航空の“随心飛”シリーズです。第1弾は週末限定、第2弾は午前8時前までの早朝便と、午後8時以降の夜便に限定されています。前者の週末限定商品は、「オフシーズン」など需要が不十分な時期の空席を埋めることを目的にし、時間帯限定の商品は、「価格は気にするが、時間は気にしない」レジャー利用者の需要喚起を目的としています。

2社目は特定の目的地にのみ有効かつ利用日や時間帯の制限がない海南航空の初代の“随心飛”です。この商品は、同社が海南省を拠点としていることから、出発地または目的地の空港が、海南省にある路線に限定されています。海南省は「離島免税」政策を取っており、対象となる免税店では、中国国内旅行者もブランド商品などを免税価格で購入できます。海外旅行に出られない中、海南島の免税店での買い物ニーズは高まっており、海南省での消費を促進することが、この航空券の狙いでもあります。

“随心飛”の深意には、収入に直結することに加え、限られたコストで長期的な市場の信頼を回復するという意味もあります。旅行需要の喚起としては、すでに大きなプラスの効果が明らかになっており、10月中旬の時点で、中国東方航空の“随心飛”利用回数は250万回、最も利用回数の多い利用者は、80回利用しました。ブランドマーケティングとしても効果的で、利用者が航空会社から直接予約をするきっかけにもなっており、航空会社と消費者の双方にメリットがあります。空の旅の需要はまだパンデミック以前には戻っておらず、企業間の競争は厳しくなっています。“随心飛”のような商品は、将来的に利用者の選択をより良いものにし、航空会社のブランドを強化するのに役立つと言えそうです。これはおそらく中国東方航空が評価することになるでしょう。

機窓

これまで中国の航空業界は、これほど長期間に渡る大きな需要の減少を経験したことがありません。“随心飛”のような旅行需要を喚起する商品の出現や、パンデミックによる影が解消するにつれて、航空会社は徐々に通常の運航状況と収益レベルに戻るでしょう。少なくとも現時点で“随心飛”は、航空会社の業績に、プラスの影響を与えていると一般的に考えられています。利用者はお得な商品を購入でき、空の旅の需要は喚起され、よいプロモーションとなっています。さらに海南航空のように、旅行者に新しい目的地の可能性も提供しており、この特別な時期の新しい取り組みとして価値を発揮しています。日本の観光産業においても苦しい時期が続いていますが、知恵を絞って乗り越えていきたいものです。(ゆい)