クラウドファンディング開始初日に全320台購入された“弱いロボット”
“弱いロボット”NICOBOは、クラウドファンディングでの購入を開始したところ、初日に予定していた台数すべてである320台が完売となりました。
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NICOBOは、パナソニックと豊橋技術科学大学の岡田美智男研究室(ICD-LAB)が共同開発した“弱いロボット”です。パナソニックは、「暮らしの豊かさに加えて人の“心”も豊かにするライフスタイルを提案したい」という想いを持つスタッフで、2017年にこのプロジェクトをスタートさせました。共同開発者の岡田教授は、「どこか頼りないけれど、なんだかかわいい、ほうっておけない――。そんな人の優しさや思いやりを引き出す “弱いロボット”」を提唱し、研究開発されています。そうして完成したNICOBOを、2021年2月にクラウドファンディングでの購入を開始したところ、初日に予定していた台数すべてである320台が完売となりました。「人とロボットの対等で、ほどよい関係から生まれる新しい生活を目指して」開発された最先端ロボットNICOBOとは、どんなロボットなのでしょうか。NICOBOのプレスリリースでは、主な特徴として、下記のように紹介されています。
- 撫でるとしっぽをふって、小さな幸せをちょこちょこ与えてくれます
- 寝言を言ったりオナラをしたり、ぼーっとしたり、一人でマイペースに過ごすことも
- ちょっとずつ言葉を覚え、がんばってしゃべったり あなたにそっと寄り添います
NICOBOは、音楽をかけることもできなければ電気のスイッチオンオフも、正確な言語・音声で話すことも、自分で動くこともできません。スマートスピーカーやお掃除ロボットなど、住まいの中で使用する高機能な技術やロボットが続々と登場し、生活が便利になる一方で、なにもしない・できないロボットのニーズも高いという現象は、人々が暮らしに求めるものが、生産性や利便性だけではないことの表れではないでしょうか。
デジタル化により、さまざまな「無駄」が排除され、生活も仕事も効率化されています。「いかに効率的にスキルアップをするか」、「なりたい自分になる努力をするか」など、自分の価値を高めるための言葉やセミナーが溢れ、自己啓発に関する特集を見ないことはありません。もちろん、これからの変化の激しい世の中で生きていくために、自分の価値を高めることは大切なことです。一方で人間は、合理的な方法だけを選んで生きることは難しい生き物です。最近は、積極的な/効率的な行動をしない=時間を無駄にしている、という空気が蔓延し、とても生きづらくなってきているように感じます。人々がNICOBOのような“ただ寄り添ってくれるもの”に惹かれるのは、非効率で生産性がないところにこそ、暮らしのちょっとした幸せや喜びの一端があるからなのかもしれません。
旅行について考えてみると、コロナ禍前のように、「積極的に観光をしてまわりたい」、「新たな体験をしたい」というよりは、「ゆっくり過ごしたい」、「リフレッシュしたい」といったニーズが高まっているように感じます。筆者自身も、「家以外の場所で、なにもせずゆっくり過ごす時間が欲しい」と思うことが増えました。それは遠方に出かけなくても、近場のホテルや旅館の部屋で、ただのんびり過ごすだけでもよいのです。そんな時間がどれほど大切な人生の楽しみだったのか、この1年でこれ以上ないほど身に染みています。
コロナ禍により、自分たちが思っている以上に、心身を労わることが必要になっているように感じます。「積極的に“これをしたい!”ということはないけれど、気持ちをリフレッシュしたい、でも自分で行動する気力はない」という、表面化してきていないニーズをそっとすくい上げることが、今求められているのかもしれません。(オカ)
出典:
Panasonic
https://panasonic.jp/topics/2021/02/000000435.html
Makuake NICOBOプロジェクト活動レポート
https://www.makuake.com/project/nicobo/communication/detail/615765/