だいたい肉?0%ミート

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フェイクミート市場(0%ミート)が活発化。2030年の世界市場規模は1兆8000億円を超えると予測されています。

フェイクミート市場(0%ミート)が活発化。2030年の世界市場規模は1兆8000億円を超えると予測されています。
Source
株式会社矢野経済研究所 プレスリリース
「代替肉(植物由来肉・培養肉)世界市場に関する調査を実施(2020年)」(2020/05/29)

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フェイクミートとは、大豆をはじめとする植物性タンパク質を原料に、肉に見た目や風味を似せてつくった代替肉のことです。そのフェイクミート市場が急速に活性化している背景として、地球環境問題や人口増加、そして健康志向のトレンドによる「植物性代替肉=フェイクミート」が注目されていることが挙げられます。

日本ではあまり身近に感じられませんが、海外には、ベジタリアン以外にも、宗教上や健康上の問題で肉を食べられない人がおり、肉を使用しないメニューを提供しているレストランは数多くあります。近年では国内でも、食品製造企業から相次いで家庭用の代替肉商品が次々と登場しているほか、ファーストフード業界でも、ハンバーガーの具材として代替肉の導入が始まっています。

古今、肉は「贅沢品」というイメージや、「食べたときの満腹感」「パワーがつく」などの効能で人を惹き付けており、魚介類や植物性たんぱく質の単純な代替という位置づけではありません。精進料理では大豆を肉のように加工することがありますし、家庭でもカロリーオフのたんぱく質メニューとして、肉に見立てた大豆ハンバーグなどが浸透しています。
「本来であれば肉は食べないが、食べたい気持ちはある」という人々にとって、異なる食材を「肉に擬態化」させたフェイクミートは、健康と気分的な満足の、両方のニーズを満たすものになります。肉を食べる人・食べない(控えている)人のすべてが潜在顧客になり得るため、製造事業者にとって、市場拡大の可能性が大きいビジネスとして認識されているのです。

ではなぜ、最近になって「フェイクミート市場」が注目され、動物性肉から置き換わるとも言われ始めているのでしょうか。それには、3つの背景があると考えます。
1つ目は、「人口増加」です。国連の推計によれば、世界人口は2030年には約85億人(2019年比10%増)へ増加し、2050年で約97億人(同25%増)となる見通しです。人口増加に伴って食肉消費量が増加することが推測されます。
2つ目は、「環境保全」です。畜産業における牛のおならやゲップはCO2の28倍もの温室効果のあるメタンガスを大量に排出します。また、牛肉1kgを生産するためには、11kgの穀物が必要と言われています(豚:7kg、鶏:4kg)。畜産業とそれを支える飼料・水資源の大量利用が地球環境に与える影響が懸念されています。
3つ目は、「世界トレンド(健康意識と企業投資)」です。英国では成人人口の14%(720万人)が肉を含まない食事をとっており、動物性の肉を食べない「ベジタリアン」「ペスカタリアン」「ヴィーガン」などの非肉食者は年々増加しています。これに、アメリカで近年注目されている投資手法「ESG投資」(E(environment/環境)、S(society/社会)、G(governance/企業統治)を指標として行う投資手法)の投資先としてマッチしたことが、ビジネスとしての進展を大きく押し進めました。フェイクミートはE(環境)とS(社会)に当てはまる投資先として極めて相性がよいのです。

フェイクミートビジネスは、非肉食者や健康志向者が「楽しく欲求を満たしながら」「自身の健康に寄与し」「地球環境にも配慮できる」という点において、単純に栄養素としてのたんぱく質を補う代替食としてのプロテインや昆虫食とは一線を画します。フェイクミートは実際の肉よりも高額であることがほとんどですが、自分と社会のためになり、かつ「肉絶ち」のような”我慢”をしなくてよいことから、単価が高くても購入する消費者心理が後押しされると推測されます。

とはいえ、研究や技術は日々進展しています。将来的に動物が排出するメタンガスを抑制する環境配慮型の飼料が誕生するかもしれません。また、人間の健康維持のために、フェイクミートでは満たせない要素が今後の研究で判明するかもしれません。技術革新によって、今後再び畜産業を隆盛させるような反動が起こる可能性もあります。
「食」は生きることに直結します。人が「よく食べて、よく生きる」ために、社会構造や技術革新の積み重ねの中で、「地球環境配慮」や「健康志向」といった主旨に沿う、様々な食品ビジネスがきっとこれからも生み出されていくことでしょう。(しん)

<参考>
株式会社矢野経済研究所 プレスリリース
「代替肉(植物由来肉・培養肉)世界市場に関する調査を実施(2020年)」(2020/05/29)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2430