日本の魅力が世界1位に
先日、ダボス会議で知られる世界経済フォーラム(WEF)より「2021年旅行・観光開発指数レポート」が発表され、2007年の調査開始以来はじめて日本は1位を獲得しました。
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2021年ランキングのトップ10
先日、ダボス会議で知られる世界経済フォーラム(WEF)より「2021年旅行・観光開発指数レポート」が発表され、2007年の調査開始以来はじめて日本は1位を獲得しました。続いて2位に米国、3位にスペイン、4位にフランス、5位ドイツとなりました(表1)。
1位を獲得できた背景は?
日本が1位を獲得した背景には、2つの要因が挙げられます。
1つ目は、2021年レポートでは評価基準が大幅に刷新されたことです。日本のニュースでは今までと同じく「観光競争力レポート」、「観光魅力度ランキング」と報道されることも多いですが、原文のレポート名に注目してみると変化を感じ取れます。
レポート名は『旅行・観光競争力指数』から『旅行・観光開発指数』と変わり、評価基準に「旅行と観光関連の持続可能性」という領域が新しく設定され持続可能性(サステナビリティ)が重視される形となりました。この新しい評価基準により再算定された2019年の順位を旧評価基準による順位と比べると、日本、アメリカ、スイス、イギリス、シンガポールは順位を上げていることが分かります。日本については、新設定の領域「旅行と観光関連の持続可能性」が2019年に16位と比較的評価が高かったことも、総合順位の上昇に影響していると考えられます。
2つ目は、新評価基準において、2021年の評価は2019年から飛躍したことが挙げられます。例えば、ダイバーシティ、教育や訓練の機会などの指標を含む項目「社会経済の回復力と条件」が評価され、「旅行と観光関連の持続可能性」は2021年に11位に上昇しました(図1)。北欧の国が上位に並ぶこの領域において、この順位はかなり健闘していると言えます。このほか、「インフラ(社会基盤)」「旅行・観光関連の需要喚起」の躍進も世界1位に貢献したと捉えることができます。
ランキングから見る日本の課題
ただし、「気候変動への対応」という指標は107位と下位でした。一方、ちょうど2022年1月に当社が発表した、日本に居住する約1万人を対象にした『SDGsに関する意識調査』では、気候変動に具体的な対策を持つことがもっとも重要だと捉える人が多い結果となり(図2)、日本にとって今後取り組むべき領域であることが明確になったと考えられます。
おわりに:日本が目指すべき方向性とは
今後の日本が目指すべき方向性として、まずはこの「気候変動への対応」指標に対し対策を講じる必要があると思います。それと同時に、すでに高い評価をされている交通利便性や文化、また犯罪率が低い点などを大切にし、「安心安全の旅行が可能な日本」というブランディングを伸ばしていくことが重要だと考えられます。
訪日インバウンドの規制はまだ完全には撤廃されていませんが、外国人観光客の日本への関心の高まりを感じます。今後日本を訪れる多くの外国人観光客の満足度を高め再訪を促すためにも、今回の順位にただ歓喜するだけでなく、環境面への対応などをしっかりと行っていくことが重要です。(いり)
<参考資料>
世界経済フォーラム「2021年旅行・観光開発指数レポート」(2022.05.24)
https://www.weforum.org/reports/travel-and-tourism-development-index-2021
JTB総合研究所「SDGs に対する生活者の意識と旅行についての調査」(2022.1.28)
https://www.tourism.jp/wp/wp-content/uploads/2022/01/sdgs-tourism-2022-report-no1.pdf