取得率13.97%
男性の育児休業取得率は、2021年現在13.97%で、鈍化傾向にありながら伸び続けています。
- Source
- 厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」
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育児休業法(正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)が施行されてから、今年でちょうど30年になります。厚生労働省の「令和3年度雇用均等基本調査」によると、女性の育児休業取得率は、1996年時点では49.1%でしたが、その後伸び続け、ここ数年は85%前後で推移しています。特に、2005年から2007年の女性の育児休業取得率をみると、72.3%から89.7%へと17.4ポイントの大幅な上昇となっています。その背景には、急速に進む少子化対策としての「次世代育成支援対策推進法」が2005年4月に施行され、育児休業取得が推進されていることが影響していると考えられます。
一方、男性の育児休業取得率は、1996年時点ではわずか0.12%でした。取得率が5%を超えたのは2017年で、実に20年かかっています。女性の取得率が大きく伸びた2005年から2007年においても、影響はほとんどみられませんでした。“育児は女性がするもの”という根強い考えの改善は容易ではないと思われます。しかしながら、2019年から2020年にかけては7.48%から12.65%となり、1年で5.17%増加しました。新型コロナやリモートワークがどう影響しているのか、明確な理由は見つかりませんが、2021年現在は13.97%で、鈍化傾向にありながら伸び続けています。30年前と比較すると、結婚や出産後も働き続ける女性が増えています。これから子育て世代になる20代・30代の男女が育児休業の取得に積極的になることは、自然な流れと考えられます。
女性と比較すると、男性の育児休業取得率13.97%という数字はやはり低く、依然、社会的理解が順調に進んでいるとは言えない状況です。厚生労働省が発表した「令和2年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業<労働者調査報告書>」によると、育児休業の利用について、男性の正社員で「(会社に制度があった)制度を利用しなかったが、利用したかった」、「(会社に制度がなかった)制度を利用したかった」と回答した人は合計で29.9%にのぼり、育児休業の潜在的ニーズは高いと言えます。
また、厚生労働省によると、15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計した日本の合計特殊出生率は、2005年に過去最低の1.25になりました。その後「次世代育成支援対策推進法」の効果があり、2015年には1.45まで微増しましたが、それを境に6年連続で低下し、2021年は1.30、出生数は81万1604人と過去最少でした。子育てしやすい環境づくりのためにも、男女とも育児休業の積極的な取得が望まれます。
現在、国は男性の育児休業取得を後押しする取り組みを行っています。2022年4月には、育児休業を取得しやすい環境整備と、取得の意向確認の義務付けなどに関する法改正が行われました。また10月には『産後パパ休暇』の創設と育児休業の分割取得などについての法改正が予定されています。さらに、2023年4月には1000人以上の企業は育児休業の取得状況を公表することが義務化される予定です。これらの一連の施策により、今後は男性の育児休業取得率の上昇を期待したいところです。
なお、男性の育児休業取得状況は、産業によって大きく差が開いています。前述の「令和3年度雇用均等基本調査」によると、最も取得率が高いのは「金融業・保険業(40.64%)」で、続いて「鉱業・採石業・砂利採取業(24.54%)」でした。10%を下回っている業界は、「卸売業・小売業(5.81%)」、「不動産業・物品賃貸業(8.19%)」、「電気・ガス・熱供給・水道業(8.27%)」、「宿泊業・飲食サービス業(8.30%)」でした。加えて、規模の大きな事業者は、男性・女性ともに育児休業取得率が平均よりも高くなっています。 ちなみに、「宿泊業・飲食サービス業」は女性の育児休業取得率も産業別で最も低くなっています(63.7%)。
コロナ禍で交流が制限され、観光業界で働く人材は他の産業に移っていきました。今後、観光需要が回復すれば人材不足になるとの指摘もあり、人材確保は急務の課題です。その際に、給与面だけではなく、キャリアプランや柔軟な働き方、IT等の技術活用、育児休業等の取得に対する上司や職場の理解等、社員一人一人の要望にできる限り寄り添える環境を整えることが、今後の観光産業に必須と考えます。(あか)
【出典】
厚生労働省「令和3年度 雇用均等基本調査」(2022年7月)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r03/07.pdf
厚生労働省「令和2年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業<労働者調査報告書>」(2021年3月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000791048.pdf