最大約200万円の罰金
フランスで売れ残った衣類の廃棄を禁止する法律が施行され、違反した法人には最大1万5000ユーロ(約200万円)の罰金が科されます(※1ユーロ=133円で計算)
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2022年7月、フランスで「廃棄禁止及びサーキュラーエコノミーに関する法律」が施行されました。この法律は、商品等の再利用やリサイクルの促進により廃棄物の削減や資源の循環を目指すもので、食品以外の売れ残り品の廃棄を原則として禁止することも定めています。
衣類においては、売れ残った新品を企業が焼却や埋め立てによって廃棄することを禁止し、再利用、リサイクルや寄付を義務づけています。ファッションの中心地の一つである、フランスが規制に踏み切ったことで、環境配慮の必要性が世界中で強く認識されるきっかけとなりました。しかし、問題を根本的に解決するためには規制だけではなく、衣類を大切に長く使うライフスタイルへの変換が求められます。
現在日本でも、衣類を長く使うための様々な取り組みが行われています。伝統工芸品”京黒紋付染”を行う(株)京都紋付は、不要になった衣類を伝統技術で黒く染めて再生するサービスを軸に、複数の企業と連携してプロジェクトを展開しています。洋服・ブランド品のリユース事業を展開する(株)スタンディングポイントとの共同プロジェクトである「黒で繋ぐ」もその中の一つです。
同社では、全国を対象とした宅配買取センターを運営するとともに、都内や大阪にある買取専門店で買い取った古着を、ECサイト及び同社の創業の地である浜松市にある実店舗で販売しています。古着の中には、トレンドから外れている、あるいはコンディションが悪いなどの理由で、そのままでの販売が難しいものもありました。しかし同社は、汚れや色落ちしたものの中には再生が可能なものもあると考え、シミ抜きなどの手法に挑戦する中で、(株)京都紋付の黒染め技術に出会いました。実際に黒染めした古着に触れ、汚れや色落ちが十分に解消できること、1点ものとしての価値が付与できること、撥水機能が加わることを実感し、この技術を用いた事業に取り組むことを決めました。
加工コストや1点ものとしての価値の再定義など課題はあるものの、「黒で繋ぐ」のようなアップサイクルの取り組みはアパレル業界の課題に対するアプローチとして外せないと同社は考えています。
この事業には、創業の地である浜松市への地域貢献の側面もあります。浜松市の実店舗では全国で買い取った商品を販売しているので、浜松市内では取扱いの少ないブランドやメーカーの古着を取り扱うことができます。地域の方々に様々なファッションを楽しんでほしいという(株)スタンディングポイントの思いから生まれたビジネスです。同社は、人と物、人と地域、人と人それぞれが相互に愛着を持てる世の中こそ豊かさを実感できると考え、「もう一度、愛着を持てる豊かな世の中へ」というビジョンを掲げています。人から人へ物を繋ぐリユース事業を通じて活気ある地域づくりに貢献し、人と地域、人と人を繋いでいくことを目指しています。
アパレル業界は「世界第2位の環境汚染産業」とも言われています。衣類の大量生産・消費・廃棄が環境に与える影響を、国際的な課題として多くの人が認識し始めている中、リユースやアップサイクルの取り組みは益々広がっていくことでしょう。そのためには古着に価値を感じてもらうことが重要ですが、単に加工・販売するだけではなく、どこで誰に届けるかを工夫することによって、新たな価値を見出すことができるでしょう。(M.I)
<参考資料>
〇WWD JAPAN「フランスで売れ残り品の廃棄を禁止する法律が施行 違反者には罰金も」2022.1.26
https://www.wwdjapan.com/articles/1314821
〇JETRO「循環経済法が2月に施行、循環経済型社会へ大きな一歩(フランス)」2020.6.4
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2020/0601/d20d98ef8e3131f1.html
〇株式会社スタンディングポイント プレスリリース「黒で繋ぐ未来。創業100年以上の伝統技術で再生、古くて新しいサステナブルなファッションを提案。」 2022.5.17
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000039331.html
〇株式会社スタンディングポイント 洋服・ブランド品の買取&販売「エコスタイル」 公式サイト
https://www.standingpoint.co.jp/service_category/reuseshop/
〇株式会社京都紋付 公式サイト
http://www.kmontsuki.co.jp/index.html