5人に1人が応援
ふるさと納税寄付経験者のうちコロナ禍で登場した「応援消費」につながる返礼品を「申し込んだことがある」と回答した人は、5人に1人にあたる20.2%となりました。
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2022年7月、総務省はふるさと納税の2021年度寄付額が8,302億3,900万円であったと発表しました。寄付額は2年連続で過去最高を更新し、前年度比で約1.2倍、寄付件数でみると約4,447万件で約1.3倍となりました。コロナ禍における「巣ごもり需要」が追い風になったとみられています。
(株)さとふるが2022年2月に実施した調査によると、ふるさと納税寄付経験者のうちコロナ禍で登場した「応援消費」につながる返礼品を「申し込んだことがある」と回答した人は、5人に1人にあたる20.2%となりました。前年同調査の15.0%から増加しており、経済活動が制限される中、生産者や事業者、地域を応援したい気持ちをふるさと納税で届ける人が増えたようです。
2008年、ふるさと納税は「納税者と地方団体が『相互に高め合う』新しい関係」の期待の元に創設されました。国内の人口が13年連続で減少する中、多くの自治体は「関係人口」の拡大に取り組んでいます。ふるさと納税は、住民税のように一地域に縛られず、自由なタイミングと金額を納税者自身が選ぶ形の納税を通じて、気軽に1つもしくは複数の自治体との関係を構築できる制度です。人口が減少する自治体にとっては、全国から徴収可能な貴重な税収となっています。
自治体においては、ふるさと納税を関係人口拡大施策の1つとし、「応援消費」や地域への波及効果をより広範囲に拡大するため、単なる物品購買を通じた関係性にとどまらず、より幅広い手法で納税者と持続的な繋がりを保ち、経済を循環させていく視点を反映させることが重要になります。
例えば、群馬県草津町の返礼品には「くさつ温泉感謝券」があります。これは地域の旅館・ホテル、飲食店、お土産品等の地場産品の購入に利用できるチケットで、現地への来訪が確約され、観光による食事や地場産品の買い物などの経済活動を誘発します。このような来訪をコンセプトとする返礼品は、同じく温泉地の神奈川県箱根町、新潟県湯沢町、大分県由布市など、観光が基幹産業の自治体に多く見られます。また納税者に「称号」を与える、納税を活用した祭りやイベントの際に納税者へお知らせや招待券を送り来訪を促すなど、継続的な繋がり維持に向けて取り組んでいる自治体もあります。
(株)JTBが2021年11月に実施した「ふるさと納税と旅行に関する意識調査」では、「ふるさと納税を利用した旅行でしてみたいこと」として、「返礼品の申込先への訪問」や「納税者しか見られない箇所をみたい」などの意見が挙げられていました。地域へ行けないため制度を利用する人への施策と併せて、納税者として地域で直接サービスを受けたい人のニーズを地域振興策として組み込むことで、税収増に留まらない継続的な効果が期待できるでしょう。
筆者自身、居住地の税収減や返礼品競争の印象から、ふるさと納税をためらっていましたが、「関係人口」の観点で制度を見つめ直し、今年は一納税者として応援したい地域を探すつもりです。今後一層納税者が”自分が選ぶふるさと”との関係を続けたくなる魅力的な取り組みが広がっていくことを楽しみにしています。(RS)
<出典>
総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果 (令和4年度実施)」(2022.7.29)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20220729.pdf
総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数のポイント (令和4年1月1日現在)」(2022.8.9)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000762474.pdf
株式会社さとふる「2022年 ふるさと納税利用実態アンケート結果発表」(2022.2)
https://www.satofull.jp/static/research/2022_customer_research.php
株式会社JTB「ふるさと納税と旅行に関する意識調査」(2021.11.30)
https://press.jtbcorp.jp/jp/2021/11/hometown-tax-survey.html
<参考>
群馬県草津町 草津よいとこ元気基金
https://www.town.kusatsu.gunma.jp/www/furusato/