500年に一度の大干ばつ

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2022年の夏、ヨーロッパでは干ばつと熱波が各国に大きな打撃を与えています。the Global Drought Observatoryの最新報告によると、ヨーロッパの47％が何らかの干ばつ警報を受けており、過去500年で最悪の事態となる可能性が高いといわれています。セルビアではドナウ川の水位が下がったことにより、弾薬や未発火の兵器が残ったままのナチス時代のドイツ軍艦の船団が浮かび上がりました。イタリアのテヴェレ川では紀元1世紀のローマ時代の橋が、観光客に人気のあるコモ湖では10万年前の鹿の頭骨など古代の遺跡が出現しています。またチェコ北部の都市であるジェチーンでは、干ばつ時の水位を示し、人々に飢餓を警告するために文字を書いた上で川底に沈められた石である「ハンバーストーン」が、数十個浮かび上がりました。

図1 複合干ばつ指標 (CDI v.2.1) – 2022年8月初旬時点
出所: GDO Analytical Report Drought in Europe August 2022

この地域の多くの湖が干上がり、水位が低すぎて船やクルーズが安全に航行できないなど、干ばつは船舶の運航にも明らかに影響を与えています。ニューヨークタイムズの報道によると、ヨーロッパの重要な国際河川であるライン川やドナウ川の一部の水位が低すぎて船が通れず、リバークルーズに影響が出ており、乗客は直前に旅程を変更しなければいけなくなっています。水位低下の影響を受けた人たちは、バスで長時間移動したり、混雑した高速道路の休憩所に立ち寄ったり、小旅行をキャンセルせざるを得なくなりました。

残念ながら、この夏、ヨーロッパに影響を与えた異常気象は干ばつだけではありません。初夏には熱波により、スペインとポルトガルで2,000人以上が死亡し、イギリスの一部では7月に初めて摂氏40度（華氏104度）に達する気温を記録しました。ヨーロッパでは多くの建物に冷房設備がなく、中でもこれまで猛暑がなかった北部地域では、寒い冬でも保温性の高い建物が多くなっているため、猛暑は特に壊滅的な被害をもたらします。
　今ヨーロッパをはじめ世界中で起きていることは、単に過去の出来事の再現ではありません。科学者は、異常気象は今後さらに頻発し、激しくなると予測されています。

今年のヨーロッパはこうした過去の例のない異常気象の影響を受けている一方で、ウクライナ危機によるエネルギー不足が深刻化しています。ガスや原油の価格に影響を与えただけではなく、電気代や物価上昇がやみません。旅行については、航空券や宿泊料金も上昇していますが、観光地には多くの人々が訪れているようです。2年間、旅行を我慢してきた人々の旅行意欲は高く維持されているようです。

一方で持続可能な観光活動を推進することは、これからの観光業のビジネス戦略に盛り込まれるべきです。ますます多くの消費者が環境への影響を意識するようになっただけでなく、環境保護の知識を広め、サービス産業としての社会的責任を示す良い機会でもあるからです。長期的には、観光地が平年より高い気温に対応する設備が整っていなければ、観光客の満足度に影響を与え、天候のパターンによって観光地の好みはより涼しい地域へと変化していくかもしれません。観光・旅行業界は、顧客により良いサービスを提供するために、サービスや商品を適応させていく必要があると考えます。（KY）
　
＜出所＞
BBC (August 23, 2022) Europe’s drought the worst in 500 years – report
https://www.bbc.com/news/world-europe-62648912
The New York Times (August 28, 2022) Low Water Levels Disrupt European River Cruises, a Favorite of U.S. Tourists
https://www.nytimes.com/2022/08/29/travel/river-cruises-drought-europe.html
The Guardian (August 19, 2022) Hunger stones, wrecks and bones: Europe’s drought brings past to surface
https://www.theguardian.com/world/2022/aug/19/hunger-stones-wrecks-and-bones-europe-drought-brings-past-to-surface
The Week (August 24, 2022) 2022’s extreme weather: Another record-breaking year on planet Earth
https://theweek.com/environmental-news/1015982/2022s-extreme-weather