約1300種類の「伝えたい味」
「うちの郷土料理~次世代につたえたい大切な味~」は、郷土料理を次世代に継承するための取り組みです。約1300種類の郷土料理がデータベース化されています。
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11月24日は、一般社団法人和食文化国民会議が制定した「和食の日」です。和食は、2013年にユネスコ無形文化遺産に「和食;日本人の伝統的な食文化」として登録されてから約10年が経ちます。
そんな和食文化に関連して、農林水産省は、全国各地に受け継がれてきた地域固有の多様な食文化を次世代に継承していくことを目的に、「うちの郷土料理~次世代に伝えたい大切な味~」と題したホームページを開設しています。令和元年から令和3年までに、全国47都道府県から選定・登録された郷土料理は、およそ1300種類になりました。ホームページには、材料や作り方だけではなく、その郷土料理の歴史や背景、継承の取り組みなども併せて紹介されています。寒さが厳しい地域では寒さ対策としての鍋料理、流通が盛んではない山間地で保存食としても活用される料理、鎖国時代の世界への玄関口で砂糖と共に伝承された洋菓子など、その地域の特性や文化と根深く繋がっていることが特徴的です。
先日、「新しい旅の形」の可能性を探るための実証実験の一環として、山形県最上地域北部の真室川町に行きました。冬の寒さが厳しい最上地域で、昔から受け継がれてきた暮らしを体験することを目的に、雪国ならではバラエティに富んだ保存食の作り方を学んだり、家の近くで採れた食材をふんだんに使った郷土料理「納豆汁」をごちそうになったりしました。山形県の郷土料理といえば「芋煮」を思い浮かべる方も多いと思います。「納豆汁」は、食材が不足する冬を乗り越えるための保存食として納豆を家で作るのが珍しくなかったこと、また納豆のとろみが保温の役割を果たすことから、体を温める汁物として県内全域に伝わる郷土料理になっています。納豆汁は、すり潰した納豆以外に、お豆腐や油揚げ、様々な種類の山菜、いもがら、ネギなどが入った具沢山な汁物で、材料一つ一つを用意するのにも手間がかかります。そのため、現代では手軽に調理ができるように、「納豆汁セット」や「納豆汁の素」がスーパーなどで販売されており、地元のお土産品にもなっているそうです。
郷土料理は、地元の一般家庭でも食べる機会が少なくなっており、伝承されづらくなっていることが大きな課題の一つとして考えられます。地元の人は、都市部からの旅行者のおもてなしには綺麗な会席料理の方がいいと考える人も多いと思いますが、日常でお目にかかることのない、滋味あふれる、手の込んだ郷土料理は最高のおもてなしと考えていいと思います。地域の特性や文化と根深く繋がり、魅力的な要素のひとつです。新しい旅の目的を見つけるために、まずはウェブサイトから、気になる「地域の味」を見つけて、残り少ない食欲の秋を楽しんでみてはいかがでしょうか。(みや)
<参考>
農林水産省「うちの郷土料理~次世代につたえたい大切な味~」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/index.html
一般社団法人和食文化国民会議
https://washokujapan.jp/1124washoku/