小学生男子で2位、女子で6位にランクイン
「大人になったらなりたいもの」調査の小学生部門において、ユーチューバー/動画投稿者が小学生男子で2位、女子で6位となりました。
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かつて、ユーチューバーという職業は存在しなかったように、子どもたちの「将来なりたい職業」は、社会環境の変化によって常に変動しています。
第一生命保険株式会社が2022年3月に発表した、第33回「大人になったらなりたいもの」調査(2022年3月発表)の小学生(3~6年生)部門において、ユーチューバー/動画投稿者(以下、ユーチューバー)が小学生男子で2位(昨年8.4%→今年9.3%)、小学生女子で6位(昨年ランキング外→今年4.3%)となり、男女ともに昨年よりも割合が増加しました。ネット動画を視聴する機会が増え、また動画配信SNSから有名人が生まれるなど、小学生にとってユーチューバーは身近で憧れの存在になっていることがうかがえます。一方で、小学生男子、中学生男女、高校生男女の1位は「会社員」であり、「ユーチューバー」は中学生女子、高校生男女ではランキング外になっています。
選んだ職業になりたい理由は、小学生・中学生・高校生の男女すべてで1位は「好きだから」となりました。一方、小学生男女の2位である「かっこいい/素敵だから」の順位は成長とともに下がり、代わりに「収入が良さそうだから」「誰かの役に立ちたいから」「働きやすそうだから」の順位が緩やかに上がっています。成長するにつれて「働く」ことが、「憧れではなく、好きを実現すること」になると考えられます。また「好きだから」という理由に加えて、それを実現するための「社会貢献・働きやすさ・収入」も子どもたちの選択に影響を与えるようになるといえます。
今回のアンケート調査では、「会社員」として仕事をしてみたい分野についても聞いています。上位には「科学技術・ものづくり」「ソフトウェア・IT」などがランクインしていますが、一方で成長と共にランキングから姿を消している分野として、「旅行・レジャー(テーマパーク含む)」があります。小学生男子では5位、小学生女子では8位、中学生になると男子で10位、女子ではランキング外になり、高校生では男女ともにランキング外でした。こうした傾向が、現在の旅行・観光産業の人材不足にもつながっているのかもしれません。旅行・観光分野における仕事は多岐に渡りますが、まずは子どもたちにその魅力に触れ、好きになる体験をしてもらい、同時に、社会における役割を知ってもらうこと、そして働きやすさ・収入でも魅力を感じてもらえる分野になる必要があると考えられます。
そのような取り組みの事例として、「子ども自身の将来への関心」と「自身の住む地域への関心」を増やす活動を行っている、観光タクシー事業を持つタクシー会社があります。この会社は地域の子どもたちとの繋がりを強くするため、地元の小学生が描いた絵を車体にプリントしたタクシーを通年走らせています。また地元の高校生には、授業の一環として仕事内容を紹介し、社員になったつもりで自社の課題の解決策を考えてもらうといった「仕事講座と体験型研修」を実施しています。子どもたちが「タクシードライバーという仕事の面白さ」を知ると共に、観光客だけでなく地域の人たちの生活にとって、タクシーが必要な存在であることを実感する機会にもなっています。
子ども時代に積み重ねた体験は、経験値や価値観に大きな影響を与えます。楽しい旅行の原体験を持ち、実際に働く人と出会い、地域を支えたい気持ちを持った子どもたちの中から、「好きを実現できる」分野として、旅行・観光に関わる仕事を選ぶ子どもが増えるかもしれません。そのためにも、子どもの成長段階に応じた旅行体験・観光教育の機会を充実させていくことが必要と考えます。(M)
【参考】
観光庁「観光教育の普及に向けて」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/sangyou/kyoiku_juujitsu.html
一般社団法人全国個人タクシー協会 公式ホームページ
http://www.kojin-taxi.or.jp/index.html