1泊100万円から

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近年城泊に注目が集まっており、2020年に事業を開始した大洲城では1泊100万円から利用ができます。

近年城泊に注目が集まっており、2020年に事業を開始した大洲城では1泊100万円から利用ができます。
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大洲城キャッスルステイ 公式HP

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近年、城泊がブームを迎えているのはご存じでしょうか。城泊とは、言葉通り「城に泊まる」ことです。城を歴史体験ができる施設として捉え宿泊事業を展開することで、持続可能な形で「保全・活用」する取り組みが始まっています。
 海外では、スペインの旧修道院(アルハンブラ宮殿内)を改装した「パラドール・デ・グラナダ」、ポルトガルの城や修道院、貴族の館など歴史的建造物を活用した宿泊施設(ポサーダ)が人気を博しています。実際にお城に宿泊できるキャッスルステイが楽しめるフランスの「シャトー ド サン マルトリー」では、腕利きのシェフが出張し、本格フレンチを楽しむことができたり、広大な敷地を利用した熱気球やパラグライダー体験ができるなど、アクティビティも充実しています。
 日本では、2020年に城泊を開始した大洲城(愛媛県)、2021年に開始した平戸城(長崎県)と現在は2つの城にて城泊が実施されています。大洲城では、1泊1室あたり100万円からで天守などを貸し切り、城主に扮した入城シーン等の体験が可能です。高額にも関わらず、これまで25組以上が宿泊しています。また今年5月には、城泊体験の一環として初めて結婚式を挙げたカップルもいるなど、ライフイベントにもお城が活用されています。その他、各地では福山城は実証実験を終え、丸亀城は城泊の実現に向けて実証実験を予定しています。

なぜ今、急速に城泊の取組が進んでいるのでしょうか。観光庁によると、日本国内に城は200カ所以上あると言われています。日本では2016年頃から古民家再生や古民家を活用した宿泊事業が提唱され始めました。そして、SDGs への対応、伸び悩む外国人旅行者の旅行消費額の課題も関連し、城泊に対する取り組みが強化されてきました。観光庁では2020年度から訪日外国人旅行者の長期滞在や旅行消費額の増加等を目指す一環として、全国各地に点在する城や社寺を日本ならではの文化が体験できる宿泊施設(城泊・寺泊)として活用するため、環境整備や体験コンテンツの造成・多言語化等の取組に対して支援を行っています。現在、国からの支援を活用し、各地にて城泊の実証実験が進んでいます。

また、城泊の取組は、単に城に泊まるという特別な体験の提供による話題性や集客効果だけでなく、持続可能なまちづくりに向けての効果が期待されています。2020年に城泊を始めた大洲市は、世界の持続可能な観光地2022年TOP100選に続き、国際認証機関の非営利団体グリーン・デスティネーションズ(オランダ)が表彰する「The Green Destinations Story Awards ITB Berlin」の「Culture & Tradition(文化・伝統保全)」部門にて世界1位に輝きました。大洲市には、江戸~昭和初期にかけて建てられた国の登録有形文化財である建造物を含む町家や古民家、臥龍山荘をはじめとする明治期の貴重な建築といった国の重要文化財など、100軒もの観光資源が点在しています。人口減少に伴い空き家となり、倒壊の危険性や管理ができないことなどを理由に取り壊しや駐車場化が進んでいましたが、2018年に大洲市とバリューマネジメント株式会社、一般社団法人ノオト・株式会社NOTE、株式会社伊予銀行が連携協定を結び、新たに立ち上がった地域DMOの一般社団法人キタ・マネジメントや地域事業者と協業しながら、城や歴史的建造物を「観る」だけではなく、宿泊など「活用する」ことで、文化財保全と話題化・収益化の両立を実現してきました。古民家については、バリューマネジメント株式会社が運営する分散型ホテル「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」として26棟31室が修復・再生されました。他にも事業者の起業や進出により飲食店等に生まれ変わるなど、空き家となっていた歴史的建造物の活用によって、まちが賑わいを取り戻しつつあります。

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「寝室イメージ」(出典)大洲城キャッスルステイ 公式HP

今年5月8日に新型コロナウイルス感染症が5類に見直され、水際対策が撤廃されたことにより、インバウンドが回復傾向にあります。日本ならではの歴史や文化を伝える資源といえるお城は、もはや「観る」だけでなく、宿泊など「活用する」ためのコンテンツとして、インバウンドの富裕層を呼び込むキラーコンテンツになり得ると考えられます。また、国内に200ヶ所以上あるとされるお城は、どれ一つ同じものはなく、それぞれ独自の魅力やお城周辺のまちなみを有しています。これまで観光客が通過していた地域でも、お城に宿泊するという高付加価値な体験の提供、城泊により滞在時間が増えることで、観光消費額を拡大できるチャンスが生まれます。それぞれの地域で行われる城泊の取組に、今後も目が離せません。(おゆ)
 
【参考URL】
大洲城キャッスルステイ 公式HP
https://castlestay.ozucastle.com/
歴史的資源を活用した観光まちづくり事業(城泊・寺泊・古民家泊等の取組)観光庁HP 
https://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kankochi/shirohaku.terahaku.html
大洲市観光地域づくり法人 一般社団法人キタ・マネジメント 公式HP
https://kita-m.com/
NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町 公式HP
https://www.ozucastle.com/concept/
バリューマネジメント株式会社 公式HP
https://www.vmc.co.jp/