17年連続
中国の広西チワン族自治区桂林市に位置する陽朔は、過去17年間、教授、学生、地域社会の観光関係者が連携し、地域の観光状況をモニターするための調査、研究、インタビューを行ってきた。
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- UNWTO INSTO
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まだ日本ではあまり知られていませんが、UNWTO(国連世界観光機関)は日本でオーバーツーリズムなどの持続可能性が話題になるずっと以前から、INSTO(持続可能な観光地づくり国際ネットワーク)による取り組みをすすめてきました。
INSTOとは、「計測できないものは、改善できない」という考え方に則り、統計などのエビデンス・ベースの政策形成を実現するもので、「地域のあるべき姿に向け、いかに観光を持続的に発展させるか」を地域レベルで議論するプラットフォームです。
2006年8月の発足以来、INSTOは持続可能な観光地づくりの推進役として寄与し続けてきました。近年は持続可能性への関心の高まりから、参加する地域も拡大傾向にあり、現在では世界中の38地域が参加していますが、残念ながら日本では、まだ参画している地域はありません。
中国の広西チワン族自治区桂林市に位置する陽朔は、INSTOの発足以来17年連続でこのネットワークに参画し、国や地方自治体、大学、地域の企業など様々なステークホルダーが関わる中で、地域の観光の状況に関するデータ収集・分析と、それらにもとづいた政策立案や組織力の強化、正確な情報発信を実施しています。
INSTOの加入条件の中でも、特に注目したいのは、データ集計に関するフレームワークです。INSTOの考え方に沿うことで、訪問者数や消費額、季節性、雇用などの経済面だけでなく、エネルギーや廃棄物量などの環境面、ガバナンスといった社会面など、観光に関連する重要なデータを取得し、持続可能な観光地づくりにつなげることができます。このようなデータに基づいたアプローチは、地域のDMOや自治体にとっても大変有用と考えられます。
もう一つのINSTOの特徴としては、認証という形をとっていないことです。そのような制度をとらず、事実にもとづいたデータやフレームワークを世界中の誰もが利用可能とする姿勢は、多くの観光地からの信頼を勝ち得る結果となりました。
持続可能な観光地づくりは、一朝一夕に達成できるものではありません。また、何かしらのゴールを達成すれば、それで終わりというものでもありません。継続的な努力と、不測の事態への柔軟な対応が求められます。それは奇しくもコロナ禍で多くの人が実感したところでもあります。
そのような意味でも、継続的にデータを収集し、持続可能な観光地づくりのための政策立案に活かしていくことは、重要なのではないでしょうか。まだ日本ではINSTOへ加入した地域はありませんが、今後、日本でも積極的な取り組みがすすめられることを期待します。
(KY)
【Reference】
UNWTO INSTO, https://www.unwto.org/insto/observatories/
UNWTO Monitoring Center for Sustainable Tourism Observatories (MCSTO), https://stm.sysu.edu.cn/mcsto/about