7年で54.9億
熊本城の復旧・復元のための寄付金は、7年間で54.9億円になりました
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2016年の熊本地震で甚大な被害をうけた熊本城は、その後の懸命な復旧作業により、2020年には特別見学路が整備され、2021年には天守閣が復旧。今年10月には、「奇跡の1本石垣」で有名になった飯田丸五階櫓台石垣の復旧工事がほぼ完了しました。完全復旧までの道のりはまだ長いものの、国重要文化財である宇土櫓の復旧方針も新たに示されるなど、復旧は確実に進んでいます。この作業にかかる費用の一部は寄付によってまかなわれており、熊本城総合事務所によると、被災した熊本城への寄付金は2016年度から2022年度までの7年間で総額約54.9億円になったそうです。
熊本城は独自の寄付制度「一口城主制度」を1998年からはじめていました。「1万円で熊本城主になれる」ということもうけ、2009年からはじまった第2期の募集では、目標とする7億円の半分以上がたった1年で集まり、個人の高額寄付者なども話題になりました。一時受付を停止していましたが、震災後に「復興城主制度」と名前を変えて再開しています。この制度では、1口10,000円で寄付をすると、城内の芳名板(現在はデジタル芳名板)に氏名等が掲示されるほか、「城主証」と「城主手形」が発行され、提示することで市が管理する施設が無料になったり、市内の飲食店や土産物店等で割引などのサービスを受けることができます。さまざまな店舗が参画しているため、城主手形を使った街歩きや市内での消費を促す仕組みにもなります。更に、1回に10口以上の寄付をした場合は感謝状が贈呈され、市長による贈呈式が行われていました(新型コロナの影響で、近年は対面では実施されていません)。この制度は、ふるさと納税での寄付も可能です。寄付の特典はあっても、具体的な返礼品はありませんが、大切なものを守る手伝いを自分ができるということが支持され、地元の人だけでなく、熊本城に思いを寄せるすべての人から、寄付が集まっています。
交流人口や関係人口といった、地域と人との新たなつながりが注目されています。熊本城は震災以前にも、再建が必要になる度、市民から多くの寄付が寄せられ、費用の一部を担ってきました。持続可能な観光地になるためには、その地域のファンをつくり、ファンとの関係性を維持することが重要だといわれていますが、熊本城の事例は、それがどういうことなのか、私たちに示してくれているように思います。
2023年は、コロナ禍以降、久しぶりに制限のない生活を送ることができましたが、当たり前の日常がいかに大切なのかを再確認させられる出来事も多くありました。これから年末にかけて、ふるさと納税先を探す方も多いと思います。少しだけ立ち止まって、大切にしたいものを思い出しながら寄付先を検討してみるのも、よいかもしれません。(お)