過去最多の年間3,506人

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2022年に山で遭難した人は3,506人で、統計が残る1961年以降最多となっています。

2022年に山で遭難した人は3,506人で、統計が残る1961年以降最多となっています。
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「令和4年における山岳遭難の概況」警察庁生活安全局生活安全企画課(2023年(令和5年)6月15日発表)

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日本の国土は全体の約4分の3が山地(火山地、丘陵地など含む)であり、全国には16,667座の山があると言われています。そのような環境を楽しむ方法の一つとして、登山があります。公益財団法人日本生産性本部が発行しているレジャー白書によると、登山の参加人口は2017年650万人、18年680万人、19年650万人でしたが、2020年・2021年はコロナ禍の影響受け、20年は460万人、21年は440万人と減少していましたが、2022年は500万人と再び増加しています。
 一方、残念ながら遭難のニュースを耳にすることも増えています。2022年に山で遭難した人は3,506人で、統計が残る1961年以降最多となっています。
 遭難増加の理由は諸説ありますが、近年のSNSなどの普及により容易に登山に関する情報が手に入るようになり、登山者自身の技量・体力を超えた山選び、不十分な準備での登山や悪天候時の無理な強行、また携帯電話の普及により通報のハードルが下がっているとの説もあります。

遭難の内容について警察庁が発表している「2022年(令和4年)」のデータによると、遭難の様態については、最も多いのが道迷いの36.5%、次いで滑落(16.5%)、転倒(17.2%)となり、上位3つで全体の7割を超えています。単独登山者と複数登山者を比較すると、遭難した人のうち死亡した人の割合は複数登山者の場合が5.5%であるのに対し、単独登山者は13.3%と2倍以上の差があります。
また遭難時の通信手段の使用状況を見ると、使用ありは全体の78.6%となっており、圏外やバッテリー切れの場合を含めて22.4%の人が、通信を使用していないことがわかりました。単独かつ通信ができない場合、命を危険に関わるリスクが一層高まることがわかります。
 自身の体力に合わせた無理のない登山計画と、身を守るための登山届の提出、地図やコンパス、無線機などの十分な準備が必要です。加えて万一の場合に備え、山岳保険などの救助対策も重要です。

一般的に遭難した場合の救助活動において、警察や消防など自治体の公的機関が出動する場合は無償です(一部有償の自治体もあり)。ただ自治体が保有するヘリコプターなどは、医療救助や災害救助など、あらゆる住民のために待機しており、山岳救助のためだけに待機しているわけではありません。
 自治体が動けない場合、民間のヘリコプターが出動するか、悪天候でヘリコプター自体が飛べない場合は民間の救助隊が出動することとなり、その場合、一度の救助活動で数十万円、場合によっては100万円以上の費用が掛かるケースもあるようです。
 山岳保険は主に登山中の死亡やケガなどに対する補償に加え、そのような遭難時の救助捜索費用が補償されるもので、単発のものから年間のもの、地震や噴火などの天災、また、リスクが高いため、一般的には保険対象外とされるアイゼンやピッケルを使用する山岳登攀(とうはん)を対象とするものなど、幅広いものが存在しています。
 また、保険とは異なる会員制度を軸とした対策として、日本山岳救助機構(jRO)が提供する山岳遭難対策制度や、捜索救助サービスに加え、会員に貸与される発信機からの専用電波を捜索チームが受信し、民間ヘリやドローンを活用することで捜索時間を短縮できる「ココヘリ」というサービスなどもあります。

前述の警察庁のデータによると、遭難者の年齢構成比は70代(23.5%)が最も多く、次いで60代(20.2%)、50代(16.0%)と続きますが、20代も8.4%を占めており、必ずしも高齢者だけが高リスクとは言えません。また筆者自身、2000年鳥取県西部沖地震発生時に、震源地付近にある大山(1,709m)の9合目を登山していたことがあり、また近年は気象災害なども増えていることから、あらゆるケースを想定する重要性を感じています。
 慢心することなく、自分の登山スタイルと難易度にあった十分な備えの上、登山を楽しむ人が増えることを願っています。(y)
 
<参考文献>