2100年にはゼロ?

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地球温暖化で、桜前線に異変が起きています。それは?

地球温暖化で、桜前線に異変が起きています。それは?
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気象庁

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気象庁の発表によれば、東京の今年の桜の開花は、3月24日。ちょうど週末と重なる30日には満開をむかえ、訪日旅行者も含めて花見を楽しむ多くの人々の姿がみられました。
 開花後に少し気温が下がったこともあり、例年より長く桜の時期を楽しむことができたのではないでしょうか。

ところで、同じく気象庁から発表されている過去の開花日のデータを見てみると、ここ数十年で、年々開花日が早まっている傾向がみられます。2021年と2023年には、観測史上、最も早い3月14日に東京で開花が観測されました。

出所:気象庁 桜の開花日よりJTB総合研究所作成

また、温暖化の影響は、開花時期の早期化だけではありません。九州大学名誉教授の伊藤 久徳氏等が2009年に発表した論文によれば、2100年には、寒冷地域では現在よりも大幅に開花時期が早まる一方、温暖な地域では開花時期が遅くなると予測されました。 実際、記録的な暖冬だった2020年には、九州で3月27日、仙台で3月28日と、ほぼ同時の開花となっています。
 これは、桜の開花には、一定の間0~10度前後の低温の期間を経ることで桜が休眠し、その後暖かくなり目覚める、という「休眠打破」と呼ばれる条件が必要ですが、温暖化が進むと、上手く「休眠」の時間が取れず、開花が遅れる、もしくは開花しない、といった現象が起こるためです。

桜前線は徐々に南から北上し、時期に応じて旅行すれば、様々な場所で花見を楽しむことができる、という常識は今後、覆されるかもしれません。また、現在の開花南限である種子島と九州南部では、桜の開花が見られなくなる可能性も指摘されています。

訪日観光客も含め、日本にとって花見は大きな観光資源ですが、今後は、開花時期の早まりや全国での一斉開花、開花範囲の変化など、影響を踏まえて受け入れを考えていく必要があるかもしれません。(Yo)
 
(参考)
今年の暖冬とサクラ(福岡市科学館)
https://www.fukuokacity-kagakukan.jp/news/2020sakura_2.pdf
わが国のサクラ(ソメイヨシノ)の開花に対する地球温暖化の影響
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001204668252160