連載
玲玲細語 ~中国人研究員が見て感じた日本と中国~
まだ間に合う。現場の力をもう一度磨こう!
皆様、はじめまして!そして以前から私の情報配信をご覧の皆様、こんにちは!JTB総合研究所の郭玲玲(カク レイレイ/Guō Línglíng)です。私は、中国遼寧省瀋陽市出身で、日本に来てから13年になります。観光人材育成のためのインバウンド関連研修や調査・コンサルティング業務を担当しています。私は中国の今・そして変化する中国を知っていただきたく、これまで個人としてコラムをお届けしてきましたが、2016年7月より連載「玲玲細語(りんりんさいご)」として弊社ホームページで掲載することになりました。少しでも中国・中国人と日本人の考え方の違いを知っていただき、お役に立てることを目標にしています。よろしくお願いいたします。
瀋陽という地名をはじめて聞いた方がいらっしゃるため、自己紹介がてら私の出身地のお話をまずいたします。瀋陽は中国最後の王朝「清」の最初の都として知られています。当時の名前は「盛京」です。今は中国東北三省の政治・文化・経済の中心都市として、市内人口約810万人、瀋陽では漢民族のほか、満族、回族、布依族等40以上の少数民族が暮らしています。すべてではありませんが、小学校から高校まで少数民族だけ通う学校もあります。
少数民族の学校では、中国語(漢語・標準語)が外国語として教えられています。各民族の共存が瀋陽の特徴の一つであるといえます。ですから、中国式履歴書には「民族」という欄が設けられていることが一般的です。これは差別ではなく、面接の際、もしくは入社後少数民族の文化・習慣等に失礼がないように対応するためです。
お話は変わりますが、先週末中国の友人と横須賀に行ってきました。三笠桟橋で船に乗り、まず猿島に向かいました。乗船時間は10分だけですが、強風で飛ばされそうでした(汗)。猿島には2時間くらいしか滞在していませんが、2つの面白いことに出会いました。
一つ目は、弾薬庫遺跡に入りたくても入れなかったある男子大学生の発言。5~6名の男子大学生が弾薬庫ドアを開けて入ろうとした時、すでに入ったツアー客を案内しているガイドさんに止められて、入ってはいけないといわれました。(※1)
「入れない?なんで?あなたたちツアー客が入ったのに?ツアー料金を払っていないから?なんとか入れないかな?うまい商売をやっているよね~日本語がわからない外国人に装って、日本語がわからないふりで入ってみようか?!」という言葉を男子大学生が連発しました。
「日本語がわからない外国人に装って!?」—–皆さん、もしかしたら、日本語がわからないのは外国人だけではないかもしれませんね。(笑)。
二つ目は、ツアーガイドの「技」にびっくりです!!展望台の休憩ベンチに座った時、たまたま6名のツアー客が、私たちの1メートル先のところでガイドさんのお話を聞いています。私は視力が弱いので見えませんでしたが、友人から中国語で「あのガイドが持っている写真の裏側(自分側)に案内稿が書かれていますよ。そのまま読んでいるだけですね~」—–半信半疑の私が不審人物のようにこのガイドさんの後ろに移動してみました。常に私は好奇心旺盛ですー。
本当だ!たくさんの文字が書かれています!これならガイドの新人さんでも大丈夫ですね!ツアーを申し込まなくてよかったと思った反面、このような工夫をして高齢でも猿島を案内していることに敬意を払いたいです。
その後このような複雑な気持ちの中、横須賀軍港めぐりクルーズに乗りました。この船でのガイドさんは、唯一女性案内人らしいのですが、説明が分かりやすく楽しく勉強になった45分間の乗船時間でした。
お客様の好奇心をうまく引き出し、写真撮影の案内、自社製品の案内等が絶妙なタイミングで嫌な気持ちにならず、本当に売店を寄ってみよう!買ってみよう!という気持ちになりました。このような案内の仕事に関わっている方、機会があれば、ぜひ一度この女性案内人の話を聞いていただきたいです。残念だったのは、売店のレイアウトと販売スタッフのサービス等には、少し改善の余地があるのではと感じました。
この数時間でスタイルが異なるガイドさんとの出会いは、現場スタッフの力がいかに重要なのか?を改めて考えさせられました。IOT、ネットが日々進化、多種多様な領域で活用されていることを否定できませんが、あくまではそれらが手段であることを忘れてはならないとあらためて感じました。今こそ、もう一度原点に戻り、現場の力、現場育成に目を向け、5年後10年度どのような観光、どのような企業にしたいか?と考えてみてもよい時期にきているかもしれませんね。
本コラムでご興味がある中国のこと、中国人のことがございましたら、ぜひご連絡ください。