連載
玲玲細語 ~中国人研究員が見て感じた日本と中国~
「君の名は。(你的名字)」「PPAP」…日本への関心が高い中国人
米国大統領選、タイの国王死去など、2016年は世界の政治が大きく動くようなできごとが、数多くありました。そうは言っても、日本に来る外国人旅行者は増え続け、中でも最多となる中国人旅行者数は、10月で既に500万人にのぼりました。今なお、訪日する中国人が増え続けている結果から、中国人が日本に対する高い関心を維持していることは間違いありません。一方で、最近中国人旅行者が変化してきているというお話もあります。それは?
英国の脱欧州連合、米国大統領選、タイの国王死去など、2016年は世界の政治が大きく動くようなできごとが、数多くありました。そうは言っても、日本に来る外国人旅行者は増え続け、10月現在で2000万人に達しています。中でも最多となる中国人旅行者数は、10月で既に500万人にのぼり、7月の夏休みシーズンが最も多い結果でした(図1)。
図1:2013年以降、訪日中国人旅行者の推移
出典:日本政府観光局(JNTO)国籍/月別 訪日外客数 (2013年~2016年)に基づき作成
今なお、訪日する中国人が増え続けている結果から、中国人が日本・日本文化・日本人に対する高い関心を維持していることは間違いありません。最近の中国人が、日本に関心をいだいている身近な例では、ピコ太郎さんのPPAPが、日本のテレビで報道される前から、中国の人気女優や俳優がそのマネをするなどして、中国でもヒットしていました。しかも、英語バージョンではありません。中国語に訳されたものです。このようなことからも、日本に注目し、日本の動きを取り入れようとする意識の高さを感じることができます。
ピコ太郎旋風の影響を受けて、私の小学校4年生の姪っ子や友人の娘もあるアプリを使って、自分がマネした動画をインターネットに公開しました。デジタルネイティブ世代の子どもたちのネット利用感覚は、私たちとかなり違います。また、日本で大ヒットした「君の名は。」のアニメ映画の公開が、2016年12月2日に中国本土ではじまりました。上映3日間で、興行収入がすでに2.8億元(約43億円)を超えたという報道がされていました。
私はまだ、この映画を見ておりませんが、中国のある映画・ドラマ・本に関する交流用の専門サイトではこの映画に対する評点が高いです。中国語のコメントを確認してみたところ、「いい映画だが、現実味が足りない」などと書いている中国人もいれば、「このような純粋な愛を求めたい。いい映画だ。」などと書いている人もいます。また、アニメ好きの中国人(性別不明)の、この映画より「この世界の片隅に」という映画がいいですよ。というコメントも見られ、あらためて日本のアニメ文化の輸出のスゴさを実感しました。このように日本に対して高いアンテナを張っている中国人が多いことからも、訪日中国人が増加していることを理解していただけると思います。
一方で私がインバウンド関連研修などで地方を訪問した際に感じることですが、中国人の日本への関心の高さに比べて、日本人の中国、外国人に対する関心があまり高くないことが伝わってきます。日本のことわざにある「郷に入っては郷に従え」、日本に来る外国人は、日本文化(特に公共のルールやマナー)を事前予習してから来てほしい、と感じることがあると思います。しかし迎える側、特にインバウンドに恩恵を受けるビジネスパーソンであれば、受け入れる準備をしておくことも非常に重要です。今後もインバウンド需要の伸びが長期化する中で来日する側と受け入れる側の相思相愛なり、双方が利益を得られるように我々受け入れる側もしっかり準備しておきましょう。
「己を知り敵を知れば百戦危うからず(知己知彼,百战不殆)」は、昔も今も、日本も中国も同じです。外国人を知る努力を怠らず、ビジネスに活かしていきましょう。
お話が変わりますが、気付けば12月、忘年会シーズンに突入しました。最近、日本で訪日ツアーをやっている中国系の旅行関係者たちにお話を伺うことができましたが、皆様が口をそろえて、「今年の中国人の訪日旅行において、大型団体ツアーが昨年より減ったとともに、買いものしなくなった」「このような状況を改善する取り組みの一環として、中国資本のM&A等が加速化している」などのお話がありました。
まとめると、主に下記3つの変化があったようです。
- 沿岸部より、内陸部発の団体ツアーが多く増えました。日本の家電量販電を連れ行きますが、買い物をしてもらえない現状です(図2)。
- 訪日中国人旅行者が団体ツアーから少人数のグループに変わっています。北京や上海の高収入地域からの問い合わせが多いようです。
- 少人数グループの場合、宿泊施設と車及びガイドの手配がほとんどで、日本滞在中の観光スポットはお客様より、事前に指定されることが多いとのことです。
上記の(1)について、2016年9月、当社が行った「居住地別(沿岸部、内陸部)に見る中国人旅行者の旅行動向」の調査で、「日本で自分用に買いたいもの」を聞いてみたところ、沿岸部と内陸部の方の差が大きいことが見られました。沿岸部の方が買いたいのは家電製品(46.8%)、日用雑貨や医薬品(48.8%)に対して、内陸部の方が家電製品(38.6%)、日用雑貨や医薬品(35.2%)という結果が出来ました。一方、内陸部の方が日本酒(38.6%)や日本の工芸品(36.6%)に対する関心が沿岸部より高く、地域によって、中国人の日本への関心が変わってきていると言えます(図2)。(本調査結果を詳しく知りたい方は、こちらをクリックしてください)
図2:居住地別中国人が日本で自分用に買いたいもの
2017年は日中国交正常化45周年、2018年日中平和友好条約締結40周年という大きな節目を迎えます。訪日中国人を受け入れる方々は、今の中国を訪問することもぜひご検討ください。お互い理解を深め、さらに人々行き交う日中の良好な関係が続くことを願っています。