映画祭だけではないカンヌの魅力
カンヌは映画祭の開催地として有名ですが、他にも様々な魅力を持っています。欧州の小都市であるカンヌから日本の地域が学べることはなんでしょうか?(エド)
南仏に位置するコートダジュールにはニース、モナコ、カンヌといった都市があり、毎年何百万人もの観光客が訪れる世界でも有数の観光エリアです。中でもカンヌは、映画祭の開催地として有名ですが、カンヌでは住民が積極的に関わって、観光振興も含めた市の取り組みを進めていることや、アウトドアスポーツ都市No.1を目指していることなどはあまり知られていません。
カンヌは19世紀の半ばにイギリスの首相であったヘンリー卿が別荘を建てるまで、ありふれた南仏の田舎町でしたが、その後多くの貴族が別荘を持つようになり、高級な別荘地として徐々にその存在が知られるようになりました。
世界的にも、その名が知られるようになったのは、1946年にフランス政府が映画祭の開催地としてカンヌを選んだことからです。カンヌ映画祭は第二次大戦後、初めてのフランスにおける国際的な文化イベントとして注目され、大きく報道されました。以降、1947年と1950年を除き、現在まで毎年、継続的に開催され“スターの街”としてのイメージが定着しました。
しかし、カンヌの魅力はそれだけではありません。近隣に多くのゴルフ場を持つゴルファーのメッカとしての顔や、毎年多くの国際イベントや会議が開催されるフランス第二のMICE都市としての顔など、様々な側面を持っています。
2017年には、さらに新しい魅力が付け加わる予定です。1つ目はBoccacabanaと呼ばれる5.2kmに及ぶ遊歩道の整備です。緑地や休憩所、スポーツ、ピクニックエリアなどがあり、誰でもがアウトドアライフを楽しめ、カンヌが目指す“アウトドアスポーツNo.1都市” プロジェクトの実現を大きく後押しするものとして期待が集まっています。
2つ目はフランスで初となる市主体のテロ対策です。「観光都市として、市民や旅行者に安全・安心を提供することは不可欠である」とし、市独自の活動として5年間で500万ユーロの予算を設け、イベント会場や通学時間帯の通学路、港湾施設などの警備強化や繁華街への防犯カメラの設置、各学校と警察を繋ぐホットラインの設置など、インフラ整備も含めた取り組みを進めています。
3つめは6月にオープン予定の“ライブラリー・メディアセンター”です。児童、青少年、成人向けに分かれた図書エリアやマルチメディアスペース、スタディルーム、セミナールームなどを兼ね揃えた大きなメディア施設の建設は、映画だけではない、文化的なイメージをカンヌに付加すると考えられます。
このような観光振興も含めた市の計画を立てるにあたり、カンヌでは市民との話し合いの場も重要視されています。2017年初めに開催された市と市民の会議には、住民の3%にあたる2,500名が参加し、市と市民が一体となってより魅力的な街を創って行こうという、住民の市政に対する関心の高さがうかがわれました。
この50年間ほどの期間で、カンヌは年間190万人が訪れる観光地に成長しました(2013年)。しかし、カンヌの魅力は、映画祭のイメージだけに頼ることなく、常に新しい可能性を探し、実現し続けていること、また、そこに行政だけでなく市民も積極的に関わっていることから形作られているのではないでしょうか。フランスの小都市、カンヌの挑戦から日本の都市や町が学べることは多そうです。
出典:カンヌ市、コートダジュール公式ホームページ