より自然に近い環境の中で、くつろぎを感じられる滞在を
ヨーロッパでは主に時の権力者たちが建立してきた「石」を使った王宮や城などが有名ですが、日本を含むアジアでは「木」を使った建物が中心で、古くから自然と調和して暮らしてきました。(エド)
ヨーロッパは古くから、社会道徳、哲学、科学や技術など様々な分野で世界に影響を与えてきました。主に「石」を使い、時の権力者たちが建立してきた王宮や城なども有名なものです。一方、日本を含むアジアでは「木」を使った建物の中で、自然と共に暮らしてきました。建築は、私たちが生活を営み、文明を形作っていく上でも重要です。これまでの歴史を振り返ってみたとき、建築の大きな転換点と言えるのはコンクリートの発明でしょう。コンクリートの出現によって、石や木を用いた建築物は減少し、無機質とも言えるコンクリート製の建物が中心となりました。最近では3Dプリンターの出現がコンクリート建築の歴史を塗り替えようとしていますが、それについてはまた別の機会に語ることとします。
コンクリートの利用は、防熱、防音、防火などに優れた高層建築物を建てることを可能とし、オフィスやマンションなどにも広く利用されてきました。しかしながら過去十数年のライフスタイルの変化で、私たちはより健康で環境に優しい生活を送りたいと考えるようになりました。新しく建てられている建築物には、環境に配慮した素材を用い、毎日の生活の中でより自然を感じられるものが増えてきています。例えば、ヨーロッパで考案されたCross Laminated Timber (CLT:強度や防熱、防音などに優れ、加工もしやすい木材)はスイスやオーストラリア、ドイツ、カナダなど様々な国々で広がっています。昨年は初めてアメリカでCLTを利用したホテルが建てられ、ロンドンでは300メートルの高層ビルであるOakwood Towerの建設が発表されました。今後は世界中で、このようなエコフレンドリーな木製建築物の増加が予想されます。
日本はもともと、地震に強い建物を短い工期で建てることができる、高い建築技術を持った国として知られています。規制緩和などで木材を用いた高層ビルを建てることが可能になれば、世界をリードする高層木材建築の国となると考えられます。
自然の美しさや景観の良さは、旅行者がどの国を訪れるかを決める際に重要な要素の一つです。日本の地域は豊かな自然を誇っていますが、木材をふんだんに使ったホテルなどの施設は、環境意識の高い都市としてのブランドイメージ向上や、より自然に近い環境の中でくつろぎを感じられる滞在を可能にするなど、都市観光にも大きな効果を与えることが期待できるでしょう。
出典:Lendlease, Daily Mail