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FRE~EDO~M ~3つの大陸で育まれた自由な視点から’今’をみる~

国際観光にとってベストな選択とは何でしょうか?

クロアチアの観光客数は、2019年過去最高を記録しました。2021年は残り1か月半ですが、好調だった2019年の70%まで累計の観光客数が来ています。新型コロナ禍の中、クロアチアの観光業はどのようにして早く回復してきたのでしょうか。

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新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)によるパンデミックが2020年に発生しました。2030年までは継続的な成長が見込まれていた世界の観光は、海外国内ともに突然停止状態になり、第二次世界大戦以降、最も苦しい期間を過ごすことになりました。日本では、新型コロナウイルスによるパンデミックになってから、大半の期間が非常事態宣言下となり、国は国内旅行の自粛を推奨し、外国人の入国も許可してきませんでした。特定の国と地域では2021年は、観光業界回復の希望が感じられる兆しが見られています。

さて、私の母国クロアチアは、ヨーロッパと地中海ヨーロッパ両方に位置し、人口は約400万人です。クロアチアは観光業に重点をおき、観光業はGDP(国内総生産)の最大25%を生み出す最も重要な産業の一つです。年によって異なりますが、クロアチアを訪れた外国人観光客数は、最大で人口の約4倍を記録したこともありました。
 クロアチアはヨーロッパとアメリカ人に夏休みの旅行先として人気がある他、新型コロナが流行する前は、日本をはじめアジアからの観光客も大幅に増加していました。2019年には1,820万人が訪れ、延べ宿泊者数は9,480万人と過去最高を記録しました。2021年は残りわずか1か月半ですが、好調だった2019年の70%まで累計の観光客数が来ています。

では、新型コロナによる危機でほとんどの国が国内旅行の回復にさえ苦労している中、クロアチアはどのようにして、最も早く回復した旅行先の1つになったのでしょうか。
 2020年以降、クロアチア政府および政府観光局は、クロアチアを新型コロナにおける安全な旅行先として、迅速かつ積極的に宣伝し、「Safe stay in Croatia(クロアチアでの安全な滞在)」キャンペーンを行いました。このキャンペーンは、消毒とソーシャルディスタンスを確保する対策を徹底し、すべての観光客に高い安全基準や手順を示しました。その結果2020年、クロアチアは700万人の旅行者が訪れ、観光レジャー目的の延べ宿泊者数が4,080万人を記録し、20年前のレベルにまで回復しています。

今年、クロアチアはEUおよびヨーロッパ圏内の旅行先、およびアメリカのマーケットに焦点を当て、クロアチアが安全な旅行先であることを示す様々なキャンペーンを実施しました。アメリカからクロアチアへの直行便は、アメリカ人観光客の大幅な増加のきっかけとなりました。また新型コロナのワクチンパスポート保持者、またはPCR検査を受け72時間以内に陰性の結果が出たすべての人に、検疫なしの入国が許可されました。入国後、閉鎖空間ではマスクを着用する必要がありますが、屋外では必要ありません。そのためほとんどの観光客は、自国よりも、自由にクロアチアでの滞在を楽しむことができます。
 また政府が観光産業で働くすべての人々に優先的にワクチン接種を決定したことも、重要な要因です。加えてソーシャルディスタンスを確保することが、世界的に当たり前になる中、クロアチア観光で人気のあるプレジャーボートの数を増やしたことで、観光客は島や湾の中の隔離された場所で安全な休暇を楽しむことができました。

2021年にクロアチアを訪れたすべての外国人観光客に感謝の意を表明するため、クロアチア政府観光局は、最も重要な10のマーケットで、「Thank you for your trust(クロアチアへの信頼をありがとう)」キャンペーンを開始しました。このキャンペーンは、夏が終わった後にまたクロアチアへの注目を集めることを目的としています。
 夏季に向け開始されたキャンペーン「Trust me, I’ve been there(私を信じて、私はそこにいた)」も成功し、多くの観光客が休暇の目的地としてクロアチアを選択するようになりました。

【Trust me, I’ve been there(私を信じて、私はそこにいた)」キャンペーン動画】
 https://www.youtube.com/watch?v=eIiNjxStcGc

2021年11月現在、外務省からクロアチアへは渡航禁止勧告が発令されていますが、日本でのクロアチアのプロモーションは継続しています。非営利団体日本クロアチア協会は、2021年12月17日から19日まで東京都写真美術館において、日本で最初のクロアチア映画祭を開催します。(www.japancroatia.org)フェスティバルで選ばれたすべてのクロアチア映画は、日本で初めて上映されます。日本人観光客が海外旅行を再開できる日まで、クロアチアと日本の交流は文化イベントを通じて続いています。

新型コロナウイルス感染症によるパンデミック下でも、魅力的な旅行先として成功することは可能であることを、クロアチアは証明しました。