JTB総合研究所の「考えるプロジェクト」 

沖縄観光危機管理シンポジウム2013  レポート

2013.03.20 JTB総合研究所 

今年3月11日、東日本大震災2周年を迎えた日本では、各地で被災者追悼のための式典やイベントが数多く催されました。日本全国が追悼ムードに包まれるなか、沖縄県では3月12日、「沖縄観光危機管理モデル事業」の一環として、「沖縄観光危機管理シンポジウム2013」を宜野湾市・沖縄コンベンションセンターにて開催しました。東日本大震災を風化させることなく、教訓として活用し、観光を基幹産業とする沖縄での観光客に対する安全・安心を強化することを目的としたものです。

スペシャルイベント -緊急避難訓練-

本シンポジウムでは、地震・津波を想定した緊急避難訓練を事前告知なしで実施しました。非常ベルのけたたましい音が鳴り響く中、シンポジウム参加者は会場スタッフの指示に従い、屋外の駐車場まで避難しました。怪我人を対象とした担架・車いすを使用しての救護や、施設利用者の安否確認を目的とした避難者リスト作成なども訓練の中に盛り込まれました。
集客施設での避難訓練は、施設利用者に配慮し、利用者のいない早朝や休館日などに施設スタッフのみで実施されるケースが一般的です。本避難訓練では、シンポジウム参加者約120名を避難者として想定し、リアリティある訓練を実践することができました。

場内アナウンスに従い、テーブルの下に身を隠す参加者たち

場内アナウンスに従い、テーブルの下に身を隠す参加者たち

 

誘導員に従い屋外へ避難する参加者たち

誘導員に従い屋外へ避難する参加者たち

基調講演 -災害復興とコミュニケーション-

観光危機管理の専門家として、関連する国際会議やセミナーの講師・コンサルタントとして活躍する、PATA(Pacific Asia Tourism Association、太平洋アジア観光協会)緊急対応タスクフォース座長(兼PATAタイ支部長)、バート・ヴァン・ヴォルビークにご講演を頂きました。危機時のコミュニケーションをメインテーマとして、自らが復興を支援した他地域事例の紹介を交えつつ、観光危機管理の重要性を説きました。責任者を明確にして一貫した行動をすることや、必要情報を確実に入手できる手段を確保すること、メディアと協働して風評被害を防ぐことなどが、災害復興を加速させるために必要であると語りました。
観光事業者・行政機関の連携に関しても触れ、災害のリスクを想定し、官民が一体となって必要な準備を進めていくことが減災のために必要であるとし、ウォルビーク氏がPATAのメンバーと共に作成した危機管理マニュアル「Bounce Back」などを活用して準備を整えていくことを推奨しました。

観光危機管理の重要性を熱く語るウォルビーク氏

観光危機管理の重要性を熱く語るウォルビーク氏

パネルディスカッション -沖縄県が安全・安心な観光地になるために-

シンポジウムの締めくくりとして、基調講演を頂いたウォルビーク氏、株式会社JTB総合研究所の観光危機管理研究室長である髙松正人、そして沖縄県内の観光に関わる事業者・行政機関の関係者3名を交えてのパネルディスカッションが催されました。沖縄での観光危機管理対策について、参加者がそれぞれの立場で見解を示しました。各パネリストが経験から得た沖縄県の観光危機管理に対する課題を話すと、ウォルビーク氏がそれに対してコメントやアドバイスを述べました。また、ファンドを設けて後の災害に備えるなど、今後沖縄県を安心・安全な観光地として確立するために必要な取組についても議論がなされました。

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

最後に -国土強靭化の一端としての観光危機管理-

3月11日の東日本大震災2周年追悼式において、安部総理は「強靭な国づくり」を進めることを表明しました。「強靭」とは、被害を軽減し、致命的な損傷を受けない抵抗力と、速やかに復興をなす回復力を備えている、という意味です。政府が観光立国という言葉を用いて観光振興を進めている今日、観光危機管理に関する取組を進めることは、国土強靭化の一端を担うといえるでしょう。本シンポジウムを含めた沖縄での取組が着火剤となり、観光危機管理の取組が全国の観光地で実践されることが期待されます。

沖縄観光危機管理情報サイト

2013.03.20JTB総合研究所 

JTB総合研究所では観光危機管理の実務支援を行っています

観光危機管理マニュアルの策定支援、現状把握調査、セミナー・シンポジウムの実施等、行政や企業での
豊富な実績とノウハウをもとに、観光危機管理の支援・コンサルティングを行っています。