株式会社JTB総合研究所は2013年7月10日、『観光危機管理 考えるプロジェクト』~観光地を訪れる観光客の安全を守るために~をテーマに、セミナーおよび研究会(第一回)を開催しました。
東日本大震災は、観光業界に甚大な影響を与えました。こうした状況の中で、国内のあらゆる地域において、安全・安心な観光地になるための取組みが加速してきています。株式会社JTB総合研究所は、地域の自治体、観光産業を支える観光関連事業者、保険会社、建設会社など、観光地を支える安心・安全の仕組み構築をともに考える機会として、セミナーと、各参加者が抱える課題解決に向けた更に深い議論を交わすための研究会を企画しました。セミナーに対しては、様々な業態から合計28名の参加をいただきました。
なお、研究会は、参加者に共通する課題解決に向けた具体的な議論を行うために、2014年3月までの間に複数回実施することを予定しています。
セミナー概要
- 観光危機管理とは 重要性とその特徴
- 東日本大震災時の事例 そこから読み取れること
- 観光客を対象とした危機・災害対策の事例
- 観光危機管理計画策定の流れ
セミナー後の質疑応答では、外国人のすみやかな救援と確実なサポートに関する取り組みや、観光客・帰宅困難者の避難や情報収集をサポートするためのシステムについての関心が高いことがわかりました。
「誰に対し」「どのような手段で」「いつ」「どのような内容の情報を提供し」、その結果として情報を受け取った人に「適切な行動をとってもらう」ための仕組みづくりの重要性が浮き彫りになりました。これは、自治体や観光地を支える観光関連事業者のみならず、情報の提供元となる組織や、情報伝達ツールやプラットフォームを有する企業、地域のコミュニティなどによる相互の積極的な関わりによって検討・実現されるべき課題です。
研究会概要
- 参加者の問題意識の共有
- 地域において想定される「危機」と、対策の現状(事例)
研究会では、参加者の地域が抱える地理的・組織的な特性と、それに伴う課題について議論されました。これまで防災担当部局が担ってきた取組みに観光の視点を付加することの意義が共有されるとともに、対象とする「観光客」に、どのような人を含めるかについて意見交換がなされました。純粋な観光客以外にも、ビジネス客、国道や鉄道を使って地域を通過中の人を対象とするべきかなど、地域には、住民以外に様々な「来訪者」がいます。自治体や運輸関連の事業者等との検討・調整を経て、災害発生時のサポート対象から漏れてしまう人が決していないように計画を検討しなくてはなりません。
また、観光地で被災した個人の情報を、観光事業者、地域の市町村を経て、都道府県に集約するまでの情報の流れについては、その連携体制の実態を明らかにすることは困難でした。地域防災計画に描かれている体制図が、果たして災害発生時に運用可能で、かつ効率的な仕組みとなっているかどうかの検証が求められています。