「宝永の噴火」を最後に、300年以上噴火していない富士山全域の調査を続けてきた産業技術総合研究所は、このたび半世紀ぶりの改訂となる「火山マップ」を刊行することとしました。15年間の全域調査によって、新たな噴火口が多数見つかったことで、防災・減災の取り組みに役立つものと期待されています。
10万年前の誕生以来、噴火を繰り返してきた富士山は、1707年の宝永の噴火を最後に静けさを保っているため、近年では活火山という認識が薄れ、2013年の世界遺産登録以降は、軽装備で登山する観光客も問題になっています。一方で2000年〜2001年にかけては、富士山直下で低周波地震が頻発。富士山麓等で突然の湧水が確認されるなど、政府や地元自治体の間で噴火への危機意識が高まっていました。
富士山の場合、山頂以外にも山腹に直線的に並ぶ複数の噴火口から噴火するおそれがあるため、立体地図をもとに、割れ目噴火を起こす危険性がある凹地を発見し、現地調査をもとに火口の分布をまとめました。調査チームは、富士山頂で最後の爆発的噴火が起こったのは、約2300年前と特定。15年に及ぶ調査結果を地図に記載し、10万年にわたる富士山の噴火の歴史をまとめた「富士山火山地質図」を完成させました。既に、山梨県と静岡県がこの地図をもとにハザードマップや避難ルートの経路について検討を開始しているところです。
(地図は、産総研のウェブサイトや、全国の提携販売店で購入可能)