観光客と観光関連事業者を守るのが「観光危機管理計画」
東日本大震災などの災害の経験を経て、人々や企業の防災や危機管理に対する意識は大いに高まりました。とはいえ、観光分野における危機管理に関しては、具体的な取り組みや議論が始まったばかりです。
行政の地域防災計画と観光危機管理計画には違いがあります。行政の防災計画の主な対象は、その地域に住む住民とその財産。他方、観光危機管理の対象は、その地域を訪れる旅行者・観光客と地域の観光関連事業者です。
住民と観光客のもっとも大きな差は、観光客は、その地域の土地勘がほとんどないうえに、その地域が過去にどのような災害や危機に見舞われ、そうした場合にどのように対処すればよいか知らないことです。もうひとつの違いは、帰宅支援の必要性の有無です。被災した観光客の安全な帰宅を支援することも、観光危機管理の重要な要素のひとつです。
観光危機管理においては、民間事業者と地域・行政の連携が非常に重要です。災害・事故発生時に、だれが、どこの宿泊施設に泊まっていたかなど、民間の観光関連事業者の持つ情報が観光客の安否確認のためには不可欠です。また、災害時の避難所として公民館や学校などの公的施設に加えて、ホテルや企業のオフィスビルなどの民間施設の協力を得ることや、外国語対応の可能な民間病院リストの整備など、民間事業者との連携体制を整えておくことが大切です。そうすることで、災害・事故発生時に地域全体として観光客の安全を守るため迅速な対応をとることが可能となります。